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~空から蚊を撲滅する マイクロドローンでマラリアに挑むTornyolの挑戦~ Alex Toussaintさんインタビュー

まえがき

私たちIESE日本人在校生は、魅力的な生き方を体現されている方にインタビューを行うことで自らのキャリアを見つめ直す機会とし、また日本の皆さまにも考えるきっかけを提供したいと考えています。

今回お話を伺ったのは、フランス発のハードテックスタートアップTornyolの共同創業者であるAlex Toussaintさんです。TornyolはYCombinator 2025年秋バッチに採択されたことでも注目を集めています。

彼らのアイデアは、自律的な小型ドローンで蚊を追跡・撃退するというものです。スマートフォンのマイクや駐車支援システムに使われるような超音波センサー、そして独自の信号処理・制御アルゴリズムを組み合わせることで、わずか40グラムのトイドローンが蚊の天敵に変わります。マラリアやデング熱など蚊が媒介する感染症によって、世界では年間70万人以上が命を落としています。Tornyolは蚊の駆除コストを100分の1に引き下げ、都市全体から蚊を根絶することを現実的な目標として掲げています。

ソナーに魅せられた学生が起業家になるまで

ーまず自己紹介と、共同創業者との出会いを教えてください。

TornyolのCEOをしているAlexです。パリ郊外で育ち、フランスのグランゼコール準備クラスを経てエンジニアリングスクールへ進みました。そこで共同創業者のClovisと出会いました。

ーなぜ起業されたのですか?

6ヶ月間、大手企業でインターンをして確信しました。正直に言うと、大企業でずっと同じ仕事をし続ける自分が想像できなかったんです。何をするにも上の判断が必要で、自分の意見が通るのは10年後。そんな働き方は性に合わない。自分のやり方で何かを作りたい。それだけです。

ーフランス出身で、蚊がそれほど身近ではない環境から、なぜ「蚊を倒すドローン」という発想が生まれたのでしょうか?

実は20歳の頃から、ソナーにずっとのめり込んでいたんです。音波を使って周囲の空間を立体的に把握する装置を自作して、学業やインターンと並行しながら研究を続けていました。そのうち、環境を3Dで地図化できる超音波ソナーが完成した。これで会社を作ろうと思ったのですが、いざ何に使うかとなると難しくて。

最初は3Dマッピング用センサーとして売ろうとしました。しかし、カメラを使った既存の技術の方がすでに優れていた。だから、競合に「少し勝てる」分野ではなく、「圧倒的に勝てる」分野を探した結果、行き着いたのが蚊でした。蚊はカメラでは絶対に捉えられないが、音波なら追える。数ヶ月の調査でいけると確信し、6ヶ月後にClovisが合流しました。強化学習の専門家でドローン制御には、まさにうってつけの人材でした。

ーフランスにもアクセラレーターはあります。なぜYCを選んだのでしょうか?

率直に言うと、フランスにYCほどのアクセラレーターはないと思っています。今もフランスを拠点としていますが、YCという実績で開く扉がいくつもあります。アメリカはもちろん、フランスでも。ネットワーク、資金調達力、信頼性。YCなしでは今の自分たちはなかったと断言できます。

ー合格率1%未満とも言われますが、選考プロセスはどのようなものでしたか?

そうですね、1.5万件ほどの応募に対して採択は約150社。改めて数字にすると、なかなかすごい倍率です。実は私たちは2回挑戦していて、1回目は落ちました。プロセス自体はシンプルで、ドキュメントを記入して、デモ動画と創業者の自己紹介動画を送って、あとは待つだけ。カメラに向かって一人で話す動画は、慣れていないと意外と難しかったですね。

YCで素晴らしいと思うのは、応募書類がちゃんと読まれること。私たちはスタンフォード卒でもなければ、YCパートナーへのコネもない、フランスで蚊を退治するドローンを作っている2人組でした。それでも内容で評価してもらえた。バッチには高校を中退した18歳もいれば、ベテランの創業者もおり、多様な環境でした。最大のハードルはそもそも面接に呼ばれることで、そこを突破しさえすれば、あとは実力と実績次第です。

ーバッチを通じてYCパートナーから学んだ最も大きなことは何でしたか?

YCのオフィスアワーは週1〜2回、パートナーとの30分間のセッションでした。その時、一番詰まっていることを壁打ちするスタイルでした。YC卒業生を招いたディナーもあって、そこでの会話からも多くを吸収しました。特定のアハ体験というより、目の前の壁を次々と突破していくマインドセットを叩き込まれた感じです。

一番の気づきは、壁の多くは自分の頭の中にしかない、ということです。たとえば、パートナーに勧められてドローンが完成する前から予約注文を受け付けたのですが、自分たちだけでは絶対にやらなかった。100ドルの返金可能なデポジットで実際に注文が入ったとき、「なんで今までやらなかったんだ」と思いましたね。そういうメンタルブロックを外してもらいながら、50万ドルの出資に見合う結果を出さなければというプレッシャーの中で走り続ける。それがYCです。

ーチームの規模はどう変わりましたか?

YC参加前はClovisと私の2人だけ。バッチ最後の月に最初のエンジニアであるPierreを採用しました。12月にバッチが終わってからは積極的に採用を進めて、今は正社員5名にインターン2名の計7人です。5月初旬にさらに2名のインターンが加わり、9人体制になります。6ヶ月弱で2人から9人というのは、ハードウェア系のスタートアップとしてはかなりのペースだと思います。

1ソナーに魅せられた学生が起業家になるまで 2プロダクトの現在地とメッセージ

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