IESEの特徴

サーチファンドとIESE

サーチファンドとは?

サーチファンドとは主にMBAの卒業生(通常1名から2名)が、卒業時もしくは卒業前に投資家10数名から一口2百万円から3百円で集めた資金(約2000-3000万円)を使用し投資ファンドを立ち上げ、約1年から2年の期間で中小企業(企業価値が10億円から20億円が目安)の中から理想のターゲット企業を「サーチ」し、オーナーと買収交渉を実際に行い、買収合意後に買収資金を投資家から追加で募り、銀行から借り入れを行ったうえで買収し、その会社に5年から10年の期間、会社を経営し企業価値を向上し、次ステージの投資家に売却しキャピタルゲインを得るというモデルです。

サーチャー自身は買収資金を投下する必要はありませんが、①企業買収時、②買収企業売却時、③一定の収益目標の達成の3つのイベントの発生時にそれぞれ10%分の株式が付与されることになります。

サーチファンドではサーチャー(主にMBA卒業生)はサーチフェーズで募った資金を、自身の給料(年収1000万円程度が一般的)、買収先を探すための費用や交通費などに使用します。買収企業のサーチに成功した投資家は、買収フェーズに入り、逆に2年間のサーチ期間で理想の買収先を見つけられなかったサーチャーはファンドをクローズすることになります。実際に27%のサーチャーが過去理想の買収先を見つけられず、ファンドクローズをしています。

サーチファンドの主なポイントは、成長性・収益性・キャッシュフローに優れた中小企業を負債レバレッジを使用して買収し、ローンの返済と収益の成長により企業価値の増加を実現させることです。そのため不振に陥っている会社のターンアラウンドや、リスクの大きいスタートアップは買収の対象外であり、投資家とあらかじめ合意した厳格な投資基準(対象産業、対象企業)にマッチした安定的な中小企業の中からサーチし買収しモデルであることから、マッチングする企業を見つけられずにファンドクローズを迎えるケースが多くなっています。M&Aの世界でも同様の事が言えますが、サーチファンドに複数投資するポートフォリオ投資家の間では

1.良い会社を買収する 2. 悪い会社を買収しない 3. 悪い会社を買収する

この順番で1が多ければ多いほど収益率が高くなり、3の会社が少なければ少ないほど理想的です。2.のケースでは1口2百万や3百万円で購入した投資家は、投資資金をすべて失うことになりますが、3.のケースでは買収資金として1億円や2億円を追加出資して、投資資金が回収できないという状態と比較し、大幅に損失を減らすことができます。

また、2.のケースでは投資家はサーチャーが調べる産業分析、会社情報、ビジネス分析などのM&Aマーケット情報に定期的にアクセスできるというメリットがあるため、サーチ期間のための投資資金の調達は比較的、容易に行われると言われています。(2018年現在)

サーチファンドとIESEの関わり

サーチファンドは米国で1980年頃からスタンドフォード大学のMBA卒業生を中心に広がったモデルですが、近年スペインやメキシコ、ブラジルなど国際的なサーチファンドが大きな成功を収めています。

米国のスタンドフォードと提携し、IESEは国際サーチファンドの研究や国際サーチファンドのカンファレンスを開催しています。IESEの卒業生の多くが近年MBAの卒業と同時にサーチファンドで企業経営者として活躍しており、2年生時にはスタンドフォードMBAの教授によるサーチファンドの授業も行われます。

計10回の授業ではIESEの卒業生でサーチファンドから実際に企業買収を行い、経営者として活躍しているアルムナイや、実際に買収から売却までを終えたサーチャーがゲストスピーカーとして登場するほか、サーチファンドを専門に投資するプライベートエクイティファンドに勤める投資家が、投資家サイドの切り口でサーチファンドに関する経験を共有してくれます。

なお、日本で、実際に一般的なサーチファンドモデルを使用して企業買収を行ったサーチャーはIESEの国際調査レポートではまだ特定されていません。

しかしながら、中小企業の後継者問題はどの国でも深刻な問題であり、MBA卒業生によるサーチファンドモデルによる企業買収例は国際的にも増加しており、日本でもMBA卒業生が投資家から資金を調達し、サーチファンドを運営するのも時間の問題だと考えられます。

日本でいずれサーチファンドに挑戦して、企業経営者になりたいと考えている方にはIESEはWHY IESE?を語るうえで大きな差別化要因になると考えます。

サーチファンドの授業を受けてみて

IESEのサーチファンドの授業はMBAのこれまでの受けたクラスのBEST5に間違いなく入る授業です。実際にサーチファンドを立ち上げて企業買収・経営を成功させているスタンフォードの教授に加え、毎回のゲストスピーカーの苦労話や、カリキュラム自身も大変充実しており

  1. サーチファンドとは何か、通常のスタートアップ起業家との違いは?
  2. どうやって投資家から資金を集めるのか、どのような手続きが必要か?
  3. どういった基準で買収企業を探すべきか、過去成功要因となったクライテリアは?
  4. 買収先とどのように交渉するべき?DDで必要な手続き、M&A関連法的書
  5. 買収後経営をどのように行うか。コミュニケーションプランは?

の主に5つの点をロールプレイングを交えながら進められます。

特に5においては実際にCEOとして、買収初日にどういったスピーチをするべきか、買収後の100日プランで従業員や顧客とどのようにコミュニケーションをとるのが成功の秘訣なのか、ということを過去の事例やロールプレイを交えて学習します。

4においては、実際のNDAやLOI、SPA等のM&Aに関連する契約書をどの様に作成するかという点や、買収資金におけるシニアローン、メザニンローン、セラーノート(買収元企業オーナーからの借入)などの特徴やコベンナンツ、買収ストラクチャーの組成方法について深堀します。

サーチファンドとして買収するという目的がなくても、大企業でM&Aに関わりたい人や、PMIで買収先企業の経営者に関わりたい人にとっては目から鱗が落ちるような実践的な内容が体系的に学習できるクラスです。

授業ではサーチファンドの

「サーチ資金の調達→サーチ→買収交渉→買収資金の調達→買収完了→買収先の経営」

のそれぞれの論点についてキーポイントをまとめたピーター・ケリー教授による「サーチファンドプレミア」を参考書類としてディスカッションします。

サーチファンドプレミアはスタンフォードMBAのサーチファンドのページから、個人情報を入力することでダウンロードすることが可能です。

この資料は企業買収を行う起業家であるサーチャーにとっては「バイブル」、もしくはそれ以上の内容の濃いペーパーです。これまでいくつものM&Aの書籍を読んできましたが、これだけ企業買収におけるノウハウがよくまとめられた資料はないと思います。

企業買収や企業買収後の経営者としてやるべきことなどに加えて、実際に使用する、投資家へプレゼンするためのPPMの例(Private Placement Memorandum)やデューデリジェンスのリストや、買収先に送付するLetter of Intentのひな型、従業員へのレター等25の追加参考資料が添付されています。

こちらはサーチャーとしてM&Aに関わらなくとも、大企業で勤めるクロスボーダーに関与するM&A従事者にとって非常に参考になる情報が満載です。

またサーチファンドの過去のパフォーマンス統計も以下のサイトでダウンロードが可能です。

例えば2016年時点でこれまでのサーチファンドに対するIRRは36%(投資元本の8.4倍)という情報や、どういった産業がサーチファンドの対象になっているかの情報等、これから日本でサーチファンドを立ち上げ、投資家から資金を調達する際に参考となるデータを取得することができます。

参考)2016 SEARCH FUND STUDY: SELECTED OBSERVATIONS

なお、国際サーチファンドの研究はIESEとスタンフォードが共同で実施しており、以下のサイトからダウンロードすることができます。

こちらのサイトではIESEで開催された国際サーチファンドのカンファレンスのビデオも視聴することが可能です。

以下はIESEがまとめた国際サーチファンド国別のファンド数です。

参考)IESE INTERNATIONAL SEARCH FUNDS – 2016 Selected Observations

企業買収に対するデット調達アクセスに優れた英国や米国投資家との地理的距離が近いメキシコでのサーチファンドが増えており、IESEの卒業生であるスペインのサーチファンドも年を追うごとに増えている状況です。

なお、サーチファンドの授業ではスペインで初めてサーチファンドを始めた人をゲストスピーカーとして、国際サーチファンドがどう米国のモデルと比較して機能するのかしないのか(本国の投資家から資金調達するべきか、それともモデルの理解がある米国の投資家から資金を調達するべきか)について深堀する授業があります。

次回、授業を受けて参考になった情報をまとめて記載予定ですので、是非ご参考ください。

サーチファンドの授業詳細 (次回掲載予定)

  1. サーチファンドとは何か、通常のスタートアップ起業家との違いは?
  2. 投資家からの資金調達/どういった投資家が理想?どのような手続きが必要?
  3. どういった基準で買収企業を探すべきか、過去成功要因となったクライテリアは?
  4. 買収先交渉・デューデリジェンス・M&A関連法的書類
  5. 買収後の経営/買収初日のアクションプランは?100日計画は?

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