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「サーチファンドの未来 ~30代CEOへの道~」Vol.2 プロ経営者 小城 武彦氏 後半

一人一人が力を発揮出来る社会を創る

―小城さん自身はいつのタイミングで、自分が成し遂げたいことを言語化出来ましたか?

小城:

僕は35歳です。僕は、実は子どもの頃から 人生12年間サイクルだと思っていて、12歳までに体の基礎ができて、24歳まで社会になる準備が出来る。そして、36歳までに人生を通して成し遂げたいことを見つける。僕の場合は、それが35歳で見つかった。僕は、大学卒業して志を持って大企業に入ったにもかかわらず、その後組織の中で力を失い目が死んでしまう連中が後を絶たないこの日本の産業界を何とかしたいと思って、「一人一人が力を発揮出来る社会を創る」というライフミッションを立てたんです。

そこで、35歳のときに、通産省(現経産省)を辞めて、まずは、日本で一番元気が良い現場を見たいと思って当時急成長を遂げていたC・C・C(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)に入社した。なぜベンチャーに活気があるのかその秘密を探りに行った訳です。最終的に7年間そこに在籍して、最後は代表権を持って経営に携わった。そして、更なる挑戦を求めて、冨山さんの産業革新機構に参画し、カネボウの社長として、再生の世界に入っていった。今はローカルで教鞭を取っていますが、ずっとやっていることは同じです。今でも35歳の僕が、空中から僕のことを見続けているんです。あいつにちゃんと見損なったと言われないようにしたい。そう思って生きています。

「なんちゃってMBA」になるな

―MBAは、将来の経営者候補を育成する教育機関です。経営者を目指すMBAホールダーに期待することは何ですか?

小城:

MBAはすごく大事だと思っています。経営を行う上で、経営理論と経営のフレームワークは、必要不可欠です。ただ、僕が残念だと思っているのは、MBAホールダーの中には、経営理論を勉強したんだけど、そのフレームワークを実践の場で使ったことがないという人が多い。知ってるとは言えるんだけど、実際使ってますかと、使い込んでる人が余りいないのが現状です。

経営は、総合格闘技なんです。当然、習ったものを使わなきゃ意味がなくて、経営のあらゆる局面で、数ある理論の中から一体どれを使えばいいのかというのを判断し、かつ、自分なりにカスタマイズして使っていく必要がある訳です。理論が、現実にそのまま使えることとか余り無い訳ですよ。ちょっとカスタマイズすることも必要なんです。「言われてみれば、それ以前授業で習いました。以上。」という人が多くて、そういう、「なんちゃってMBA」には絶対にならないで欲しい。これは、本人の意識次第でいくらでも変わります。MBA進学って本来は手段に過ぎないはずですが、MBAという称号自体が欲しい人は、やはりそうなってしまう気がします。やはり、何を成し遂げたいのかというのをしっかりと決めて、その上でMBAを活用すべきです。

リーダーシップの源泉は、自分を正しく理解して、いかに自分を駆り立てるか

小城:

あと僕は、「知」と「軸」ってよく言うんですけど、この考え方を大事にして欲しい。「知」はまさに知識のことを指して、MBAで学ぶような知識です。一方、「軸」はリーダーシップのことを指します。経営は、「知」だけで戦っていくことは無理で、「軸」も同じ位大切です。先ほども言いましたが、経営はDo things through othersなんです。経営者は、人生一緒にあまり過ごしてないような人たちとも仕事をするわけで、彼や彼女らにどうやってやる気になってもらって仕事を進めるか。本当のリーダーシップが問われます。そのリーダーシップを身に着ける必要がある。これは、リーダーシップ論ではなく、リーダシップの話です。これはMBAだけでは中々身につかない。

ウォーレン・ベニスという人が、 “Listen to your inner voice” (自分の内なる声を聞く)の大切さを説いています。リーダーシップの一番の源泉は、自分を正しく理解して、いかに自分を駆り立てるかなんです。自分が本当に何をしたくて、本当に大事にしたいことは何か。それを言語化することが大切です。言語化していない人って、判断がぶれるんです。逆に言語化する人って、経営判断がぶれないんですよ。論理だけで経営が出来たらAIに経営を任せれば良い訳で、経営の世界は答えが無い。だから最後は価値判断なんです。言語化出来ていないと、社長の言っていることが変わったなとなってしまう。

中小企業の課題は、現場ではなく、経営者に責めがある

―サーチ起業の場合、買収後、すぐに経営者として、中小企業の世界に行くことになります。MBAホールダーが中小企業の世界に行く上で念頭に置いておくべきことはありますか?

小城:

中小企業経営の世界に行って、企業の課題を見たときに、「この組織、何も出来ていないな」なんて絶対に言ってはダメです。

MBA的な人はそういうことを言いがちなんですよ。「普通はこうするよ」って絶対禁句。そこの従業員だって、一生懸命やって頑張っているし、サボっている訳ではない。現場に責めがある訳ではなく、経営者に責めがあるだけなんです。あと、横文字も、僕は絶対使わないです。僕は中学校の現代国語のみで、現場と対話をすることを常に心掛けています。僕はB2Cが長かったので、リテールの現場に行ったり工場の現場の人と沢山接してきた。そういう人たちにちゃんと話をして、分かってもらうことが必要で、なるべくシンプルに易しい日本語で話すということは、意識して欲しいです。

私は時々、自分がアドバイザーをしている会社にPEが投資しているケースに出会うことがあります。そのときに30歳前後のPEの若い人が役員とかで入ってきて、60代の経営者と事業の方向性について話をする時があります。その時に、若いPEの人は、例えば、「500人の社員の内、200人を切ると、人件費がいくらいくら浮きますね。」ということを簡単に言う。これに僕は凄く違和感を持っていて、従業員1人1人には、家庭があり、家族がいるんです。家に帰れば、その人はその家の大黒柱ですよ。1人1人の従業員の人生の重みを理解してから初めて、そういうことを言う権利があるんです。経験上、リストラは、本当に並大抵の覚悟では出来ない、辛くて大変な仕事です。その辺りのことを肌感覚で分かっているかというのは、非常に重要なことで、この辺りの感覚を養わないと経営者は務まらない。中小企業の世界はこういう世界なので、相当鍛えられると思いますよ。

―日本人材機構は、元々時限組織ということで2023年前半に予定通り、解散しました。今後、小城さんは何をされるのですか?

小城:

今は九州大学のMBAで教鞭を取っていて、これが最後の仕事だと思っています。僕のライフミッションに従って、将来ローカルで活躍するリーダー人材を1人でも多く輩出することに力を尽くしており、そういう人材は、これからローカルでどんどん生まれていく確信があります。これからが本当に楽しみです。

後、ローカルの生活をすごく気にいっています。もっと早く来ればよかったなと思っています。東京に長くいすぎたと、反省しきりですね。僕元々祖父が佐賀県で佐賀のルーツなんで、九州が合ってるんですよ。水もメシも上手いし住みやすいし本当に良い感じです。是非、皆さんには、サーチファンド起業を通じて、憧れの成功例になって欲しいと思っています。ご健闘祈っています!

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