選択科目

スペインのリーガ所属・サッカークラブCEOへの提案

IESE Class of 2017のOです。

今回は、スポーツビジネスのキャリアを志す私が行ってきた、スペインのリーガ所属・サッカークラブCEOへ提案を行う取り組みについて紹介したいと思います。

MBAでの学びには、inputとoutputの側面があると思っています。例えばinputは、日々の講義・ケース・課題等を通じて学ぶ各科目における体系的な知識やフレームワーク、分析手法等があります。Outputは、IESEのカリキュラムに即していえば1.企業インターンシップ、2. 起業経験(entrepreneurship experience)、3. 特定の分野における研究やビジネスプラン立案、コンサルティング等を行うIndependent Study Project(以下ISP)といった機会があります(1年目修了後夏季休暇期間中に、上記いずれかのoutputを出すことが求められます)。カリキュラム2年目には、自らの課外活動をISPとして申請し、学期中に取組み成果をあげることで、単位をもらうこともできます。ここまでの留学生活を振り返り、MBAでの学びを最大化するには両者のバランスが非常に重要だと改めて実感しています。その上で、inputに比べてoutputは学生それぞれの志や興味によって多様であることがIESEの特徴です。そんな多様なoutputの出し方の一つとして、ISPの一環でこのサッカーチームとの取組行いました。

経緯

私は幼少からサッカーに励み、プレーヤーとして挫折(高校部活万年補欠)したのち、大学時代にスポーツビジネスの世界を知る機会に恵まれました。当時、選手としてはダメでしたが、将来はビジネスを通じてスポーツの発展に貢献したい、と想い立ったのが今にも続く志の原点です。IESEでは、ある教授との関わりがきっかけで、1年目の2学期が始まるタイミングでサッカーのスペイン一部リーグ所属の某クラブに対し、クラブの国際化戦略について提案する機会を得ました。偶々その教授がクラブの要職に就いたのを機に、同じ志を持つ同級生、スペインのサッカークラブ経営についてもっと学びたい!と真剣に熱意を伝えたところ、ちょうど新たに外資企業が親会社となったクラブに対して、日本市場向けの事業機会を調査し提案することでプロジェクトが始まりました

銀行マン、元フットサルクラブ経営者、商社マン、という異色のバックグランドを持つメンバーでチームアップし、サッカークラブビジネスの構造整理、分析、日本市場の事業機会についての提言をまとめまることがミッションでした。三度に渡るトップマネジメント(スペイン人副会長及びCEO)との打ち合わせを通じて、クラブの持つ強み(=世界有数の観光都市をホームタウンとしていることとその潜在的市場規模、高度なユース育成メソッドに裏付けられた国内屈指のユース・チームであること等)を明らかにし、クラブの抱える問題点(日本での認知度の低さ等)をサーベイ調査を通じて可視化し、現状の日本のスポーツビジネス市場を鑑みどこに機会があるか議論を続けました。それをもとに、夏休みの前には14の事業アイディアを提案しました。

取り組み

そのうち、日本人観光客向けのプロモーション及びチケット販売強化と、クラブの育成メソッドを用いたブランディング強化の2つのアイディアにつき興味を持ってもらい、より詳細なビジネスプランの立案及び実現可能性について深堀することをクラブに求められました。私は、夏の間にビジネスプランのつくり込みや、実現させるために日本側で提携・協力できる企業候補先を探すことを続けました。観光客向けのチケット販売強化に関しては、日本の旅行代店等数社とつながり、具体的な企画立案や、スポンサーシップ、日本でのチケット公式販売代理業務等、双方にとってメリットの出るような協業案等につき協議を続けました。2年目の授業が始まった現在も取組を続けており、日本旅行代理店との取組においては国内大手のHIS社とクラブの間で正式な提携が実現し、日本向けのチケット公式販売代理業務の他、キッズ・エスコート特典付き商品やVIP施設にもアクセスできるホスピタリティ・プログラムの販売等を展開していくことが決定し、クラブのブランディングについても日本の育成年代向けのキャンプ、スクール等の実現に向けて協議が進んでいます。

最初に教授にアプローチした時にはまさかここまでクラブの新規事業に本格的且つ主体的に関わることは想像していなかったものの、振り返るとプロジェクトの各フェーズでMBAでの学びを生かし、その効果を飛躍的に高める経験になったと感じています。

プロジェクト初期フェーズ

クラブビジネスや業界の分析と戦略提案することを求められましたが、正にMBAの授業で学んだばかりの業界・自社分析の手法や戦略論を用いつつ、自分たちで手足を動かしながら考え抜いた提案に対して、CEOから直接フィードバックをもらうという貴重な経験を得ることができました。その過程では、バックグランドの異なるメンバーとの密なディスカッションを通じ、自分では考えもつかなかった視点や提案内容に気づくことも多々ありました。

ビジネスプランの深堀フェーズ

それまでビジネスプラン等つくったこともなく四苦八苦しながらも、ちょうどアントレプレナーシップの授業を担当していた別教授に助言を請いながらつくりあげていきました。

提案したプランの実行フェーズ

クラブの関係各部署とのより密な対話・調整や、提携候補先との具体的な実施・契約内容の詰めを行い、クラブ側と提携候補先との間の利害調整を中心としたより実践的な作業が求められました。その過程では当初考えていたプランの欠点や想定していなかった点に気づき、軌道修正していかなければならない状況にも度々遭遇しました。また、口頭では二つ返事でできると確認したことが後にあっさり覆ったり、提出してもらうことになっていた情報の期日が大幅に過ぎてもこれと急ぐ素振りを見せなかったりと、スペインの商習慣と日本の商習慣の違いについても多くの気づき得ることが出来ました。引き続きプロジェクトは進行していきますが、少しでも多くの成果を各関係者と共有できるような機会にしていきたいと思っております。

最後に

スポーツビジネスはテーマ・領域としてはIESEのプログラムの中は一般的ではないものの、自分の興味に沿ったoutputの機会がIESEでは溢れており、また冒頭で述べた通りその多様さにこそIESEの特徴であるDiversityの神髄を感じられるのではないか、と考えております。日本人同級生を見渡しても、日本酒文化をスペインに普及させるプロジェクト、日本飲食店のバルセロナでの立ち上げ支援、日本の花火をヨーロッパに展開する事業、ヨーロッパの教育事業を日本で展開する試み等と、本当に様々な課外活動をISPとして精力的に取り組むメンバーがいます。それぞれの事例において共通するのが、「自分の興味や志が活動の源泉」であり、「MBAでの学びを実践」しながら「それを実現するための機会や様々な支援の形をIESEから受けている(各分野の専門家である教授の協力体制、多様性あふれる同級生からの学び、在校生・アルムナイのネットワーク等)」点です。これこそ、IESEのMBAにおいて学びを最大化させる経験の一つではないかと思う今日この頃です。

関連記事

Coffee Chat

最近の記事
おすすめ記事
  1. Surpass Boundaries with Humility and a Spirit of Respect: An Interview with Mr. Kadokura, CEO of APCE (AGC Pharma Chemical Europe)

  2. 謙虚な心とリスペクトの精神で与えられた「枠」を超えよ―APCE(AGC Pharma Chemical Europe) CEO 門倉さんインタビュー

  3. IESE Japan Search Fund Forum – 投資家パネルディスカッション 「サーチファンド起業の意義」

  1. MBAにおけるcontribution

  2. 2年制 VS 1年生: 2年生をどう過ごすか?-Take ownership of your destiny-

  3. Summer Entrepreneurship Experience(短期起業体験)プチ体験記

TOP