まえがき
私たちIESE日本人在校生は、魅力的な生き方を体現されている方にインタビューを行うことで自らのキャリアを見つめ直す機会とし、また日本の皆さまにも考えるきっかけを提供したいと考えています。
今回は、KDDI株式会社でキャリアをスタートし、スペインのIE Business SchoolでMBAを取得後、AI系スタートアップを経て、2025年の参議院選挙にて初当選を果たした奥村祥大(おくむら よしひろ)さんにインタビューをしました。ビジネスの最前線から政治の世界へと飛び込んだ経緯や、MBAで培ったマインドセットが国政の現場でどう活きているのか、そして政治家として成し遂げたいことなどを伺いました。
MBA留学
-なぜMBA留学に行こうと思われたのでしょうか。大学時代にグローバル思考が強まったとのことですが、公共政策系などは検討されなかったのでしょうか?
実はMBAに行った当時は、政治には全く興味がありませんでした。「ビジネスの世界で頑張るぞ!」という気持ちが強かったんです。 ビジネスに興味を持ったきっかけは、早稲田大学で「大隈塾」に参加していたことですね。茂木健一郎さんなど多彩なゲストが来られる中で、ハーバードMBA卒の新浪剛史さんがいらっしゃいました。その姿が非常にパワフルで、そこで初めてMBAについて詳しく聞いたんです。ビジネスの最前線でダイナミックに動かれている姿に憧れ、感化されました。
もともとはアナウンサー志望で標準語に慣れるために早稲田大学に進学したのですが、ふと「俺、テレビ見ないな……」と(笑)。それよりもビジネスの世界で20代のうちに海外経験を積み、ゆくゆくは経営者として自分で事業をドライブしていきたい。そう考えて、起業に強い留学先を主眼に置いて探しました。新卒で勤めていたKDDIでも海外に関わるチャンスを模索したのですが、すぐにポジションを移ることは難しかったこともあり、会社を退職して私費での留学を決めました。
–その中でヨーロッパのIEビジネススクールを選んだ理由はなぜでしょうか?
やはり起業に強いスクールに行きたかったからです。バブソン大学MBAなども検討しましたが、IEのOB・OGの方々と話す中で、実際に起業している方も多く、「ここなら自分が求める経験が得られそうだ」と感じました。 実際、IEにはスタートアップ・ラボがあり、起業家がメンターとなってピッチをしながらビジネスアイデアを磨く環境があります。何より、周囲に起業家マインドを持った人が多いので、自然と感化されていく環境が決め手でした。
-MBA後、一度スタートアップを経験してから政治家に挑戦されています。その経緯や、官僚という選択肢についてはどうお考えでしたか?
留学時は妻と二人で行き、現地での就職も選択肢にはありました。ただ、食事や銭湯などの文化も含め、やはり日本が好きだったんです。MBA卒業後に日本に帰ることを意識した時に「せっかく帰るなら日本に貢献したい」という想いが強くなりました。 どうせビジネスをするなら大きなことをやりたいとも考えていて、例えば今の大学生は教科書を後輩に譲るのではなくメルカリで売買しますよね、そうした「日常の風景や行動様式を変えてしまうスタートアップの力」に魅力を感じスタートアップに挑戦する決意をしました。自分自身で起業をすることも考えてはいたのですが、MBA留学直後で金銭的に余裕がなかったこともあり、ひとまずはスタートアップに入社することにしました。
スタートアップで仕事をする一方で、「日本にも挑戦したい人はたくさんいるのに、主に金銭面の問題で挑戦できていない」と認識を新たにするようになりました。例えば「社会保険料が大きすぎる」といった制度そのものに問題があるのではないか?イノベーション云々の前に、まずこの仕組みを変えるべきではないか?そう考えた時、「政治家になるしかないな」と。 組織の一員になるのは向いていない自覚があったので(笑)、官僚やその他のアプローチは発想としてありませんでした。私は少し「ネジが外れている」タイプなのでしょうね(笑)。選挙に勝たなければいけない不安よりも、「まずは挑戦してみて、何とかする」という気持ちが勝っていました。
–ご家族の反応はいかがでしたか?
両親からは「政治家はどうしても敵ができてしまうから、京都で政治家になるのはやめてくれ」と言われましたが(笑)、それさえクリアすれば大丈夫という感じでした。昔から「やりたいことはやればいい」という主義の家庭だったんです。 妻は、もともと私が「いつか起業する」と言っていたのを理解してくれていました。彼女の家系も会社員以外の働き方をしていることが多く、政治家に挑戦することにも理解がありましたね。
–政治活動の中で、MBAでの経験は活きていますか?
「マインド」と「スキル」の2つの点で活きていると思います。
マインド面では、海外でのタフな環境の中、英語でのプレゼンなどに必死で取り組んで生き延びた経験が、今の自信になっています。今でも大臣への質問に立つ際にあの時のことを思い出します。
スキル面では、全く知らない分野に食らいついてキャッチアップする力です。これはMBA時代、準備時間が限られる中で、幅広いトピックについて予習・議論した経験がそのまま活きています。