交換留学

純ドメサバイバー、極寒シカゴに挑む―Chicago Booth 交換留学記

Q. まずは簡単な自己紹介をお願いします。

IESE Business SchoolのClass of 2025(2025年5月に卒業予定)のJです。MBA留学前は監査法人、会計コンサルティングなど10年ほどの職歴を経て、MBAに来ました。MBA卒業後は戦略コンサルティングファームに就職予定です。なお、MBAが初めての海外在住で、いわゆる純ドメです。

Q. なぜ交換留学をしようと考えたのですか。

きっかけは仲の良いスペイン人たちがこぞって交換留学の検討をしていて、それに触発されて検討を開始しました。彼らにとってはIESEが国内MBAなので、交換留学が貴重な国際経験の機会とのことでした。私は既にIESEが国際経験の機会なのですが、(追加の学費なしで)他校のMBAの経験をしておくこと、新しい友人を作る経験をすること、あえて居心地の良いIESEから外に出て挑戦することも悪くないかなと思い、応募してみました。

なお、交換留学の選定プロセスについてはClass of 2015の先輩が詳細を記載してくださっているので、詳細はこちらをご参照ください。(https://iese-japan.com/exchange-blog/exchange-program%e3%81%ae%e8%a9%b1-1/)。

Q. 数ある交換留学先の中でなぜChicago Booth、そして極寒である冬学期のシカゴを選ばれたのか教えてください。もしかして寒いのが好きなんですか

MBA受験時は、ダイバーシティ・費用などの関係で欧州校に絞ってみておりましたが、本場米国のMBAはどんな感じなのだろうかという点についてはずっと気になっておりました。また、旅行レベルでも米国に行ったことがなかったので、本場米国のMBAを受けてみたい・住んでみたいということで米国のMBAに絞って検討しました。また、せっかく行くならいわゆるM7(*)でという観点なども含めて検討し、ご縁があってBoothにお邪魔することになりました。

冬学期となった背景ですが、サマーインターンの期間の関係で、ほとんどの学校の秋学期は応募できませんでした。そのため、冬学期を選択することとなりました。なお、シカゴの冬の寒さについては後ほど触れます。

(*: Chicago Booth, Columbia, Harvard, Kellog, MIT, Stanford, and Whartonの7校をM7と呼称する)

Q. 学業面でIESEとBoothの違いを感じられることはありましたか。

授業選択の自由度、授業の進め方、学生の取り組み姿勢の3つの観点で言及したいと思います。

  • 授業選択の自由度

IESEの1年目は授業選択の余地がなく、同じクラスメイトと決まった授業を受けます。一方で、Boothは1年目も2年目も学生の興味関心に基づいて自由に授業選択ができるので、非常に自由度が高いです。また、授業負荷の調整も容易です。例えば、今学期は就活が忙しくなりそうだから単位取得数を減らしておこう、次学期は就活が落ち着くのでその分の単位を取得しておこうといった柔軟な意思決定ができます。これは選択する科目にもいえ、例えば就活の忙しくなりそうな時期であれば、自分のバックグラウンドに近い科目(得意な科目)、かつ、少ない取得単位数にするということもできます。

  • 授業の進め方

基本的にIESEは授業1コマが1時間15分です。一方、Boothは3時間となっています。IESEはケースメソッドを採用しているので、この1時間15分について基本的にはケースの内容について議論します。Boothは最初の1時間半はフレームワークなど普遍的な内容を学び、残りの1時間半についてそれに関連するケースを学ぶというスタイルを採用している授業が多かったです。IESEではケースについての議論が過熱してしまったため、Take awayがおざなりになってしまうことがあったのですが、Boothでは先に普遍的な内容をレクチャーで学んでいるため、「あれ?今日のTake awayってなんだっけ?」という”Take away迷子”になることはありませんでした。

  • 学生のプロファイル

IESEでは同じ学年のFull-time MBAの学生と共に授業を受けます。一方でBoothはFull-time MBAの1年目、2年目のみならず、Part-time MBAの学生やChicago大学の学生(BoothはChicago大学という総合大学のMBAです)と共に授業を受けることもあります。Chicago大学の学生とも授業でチームを組む機会がありましたが、非常に優秀で自分が大学生の時と比べて明らかに成熟しており、大変刺激になりました。

Q. 学業面でIESEがBoothから取り入れるべきことはありますか。

制度設計の面で3つほどあります。

  • TA(Teaching Assistant)の導入

BoothにはTAが各授業にいるため、授業の出欠、授業中の発言の量と質を第三者的な視点で管理しています。IESEでは前者は行われていたのですが、後者は教授の印象次第というところがあったので、より適正な成績評価という観点ではTAを導入した方が公平性を保てるのではないかと思います。

  • 学生同士の評価制度の導入

BoothではTeam projectのある授業で学生同士の評価も成績に組み込まれます。IESEでは基本的にTeam projectのアウトプットのみが教授に評価されるため、チーム内で貢献度にばらつきが生じ、いわゆるフリーライダーが発生するという問題点がありました。この点を解決するために学生同士の評価を成績に組み込むというのは、IESEも一考の価値があると思います。

  • ケースメソッドの再考

授業の進め方の部分でも記載しましたが、ケースの議論が過熱し過ぎた場合に、IESEでは時としてTake away迷子になることがありました。この点は教授のファシリテーションの巧拙にも影響を受けると思いつつ、ビジネススクールでの学びという観点からはケースメソッド一辺倒という進め方についても検討の余地はあるかと思いました。

Q. 交換留学先で印象に残っていることはありますか。

アメリカンフットボールの最高峰であるSuper Bowlの試合を観戦するホームパーティーに招いてもらい、本場アメフトの盛り上がりを肌で感じられたことです。渡米する前は大谷翔平の報道の影響から米国ではMLBが最大のスポーツだと思っていたのですが、アメフトファンの方が多いとのことでした。アメフトはルールすら理解していなかったのですが、見た目以上に戦略的なスポーツということがわかり、興味関心が湧きました。こういった興味関心も人生に彩を添えてくれると思うので、大変良い経験となりました。

Q. 交換留学先で苦労されたことなどありますか。

言語面、特にリスニングで苦労しました。Business, Politics, and Ethicsという授業を取っているのですが、倫理などについては背景知識があまりない中で、早口の米語の教授の喋っている内容を理解するのに大変苦労しました。Boothに行くことが決まってから、IESEでもできるだけ米国人の友人と話したりする機会は設けていたのですが、それでも不十分だったようで特に最初の1カ月はかなり苦労しました。また、授業外でもレストランやカフェでのちょっとした会話を聞き取れないことがあり、恥をかきましたが、やはり現地での経験はかけがえないものだと感じています。Boothにいる日本人の方に学習法を聞いたところ、YouTubeのコンテンツをすべて英語で観るとおっしゃっていたので、私も趣味のゴルフ・野球観戦に関するチャンネルを英語で観るように試みています。

また、苦労とは少し異なりますが、やはり1月・2月のシカゴは寒かったです。1月・2月それぞれ1週間ずつマイナス20度に達するような日があり、外を歩いていると”寒い”を超えて、”痛い”という感覚をはじめて経験しました。ただ、キャンパスをはじめ、建物の中はしっかり暖房が効いているので、それほど苦痛には感じませんでした。

Q. 交換留学を通じてIESEの良さを感じられたことはありますか。

ある程度受動的であっても恩恵を受けられるネットワーキングの機会です。Boothでは積極的に行動しないと、ネットワーキングの機会を得ることが難しいと感じました。Boothではプロフェッショナルクラブなどに所属することで友人を作るのが主流だと伺いました。しかし、これだとコンサルティング業界に興味のある友人を作ることはできても、それ以外の業界の友人を作るためには別のクラブ活動に参加することなどが必要です。一方で、IESEでは多国籍・多様なバックグラウンドの友人を作ることが容易です。私はIESEではクラブに所属しておりませんでしたが、1年間固定のセクション・チームという制度があることから多様な国や業界の友人を容易に作ることができました。この点がIESEの大きなアドバンテージだと思います。実際、サマーインターンではアフリカ諸国に関連するプロジェクトを実施したのですが、IESEにエチオピア出身やナイジェリア出身の友人がいたので、彼らにインタビューをすることができ、プロジェクトを円滑に進めることができました。やはり、世界各国に友人ができるというのがIESEの最大の魅力だと思います。

Q. 最後に何か言及しておきたい点はありますか。

IESEでもBoothでも多くの方たちに支えられて卒業という地点まで到達することができました。短い期間でしたが、Boothで仲良くしてくれた方々には大変感謝しております。また、Boothにいる間にBarcelonaから連絡を取ってくれたIESEの友人たちにも大変感謝しております。この場をお借りして感謝をお伝えしたいと思います。本当にありがとうございました!ことですので、本感想が極めて主観的かつ限定的である点にご留意頂いた上で、少しでもご参考になれば幸いです。

企画:Co 25 尾島

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