IESEには世界各国の提携校から交換留学生が秋ターム(9月~12月)、冬ターム(1月~4月)それぞれ数十人やってきます。今回の企画では、秋タームにIESE→Kelloggへの交換留学生、冬タームに逆にKellogg→IESEへの交換留学生がいたので、それぞれの視点で両校の違いと得られた気付きについて振り返ってもらいました。
Class of 2025のAです。IESEの交換留学プログラムを利用し、2024年9月から12月の約3か月間Kelloggへ留学しました。今回は、MBA留学をお考えの方や、入学後交換留学をお考えの方に向けて、学業および生活面で私が感じた両校の違いをお伝えします。
学業面
- 授業形式
IESEはCase Study中心。登場人物の立場から選択肢や判断基準、制約や行動計画、文脈踏まえた要点を考える訓練になる一方、授業終盤のWrap upが不十分で汎用性の高いフレームワークを得られない時がある。KelloggはLecture形式も用いられ、多くのフレームワークを効率よく学ぶことが出来るが、具体性に欠け、実務への応用が難しい時がある。結局は教授の巧拙がTakeawayの質と量を左右する点は両校共通。
私が受講したElectivesでは、IESEはSebastien Brion教授のPower and Influence in Organizations、KelloggはBrooke Vuckovic教授のMoral Complexity in Leadershipが深い学びの多い授業だった。後者は、文学作品からリーダーが直面する普遍的な道徳的問題とその対処方法を探る授業。授業冒頭約1時間、事前に読んできた課題図書を生徒6人で議論、後半に教授が解説。一例として、初回テーマは“Greed”で、Leo Tolstoyの How much land does a man need, Dorothy ParkerのThe Standard of Livingを読み、 “How much is enough?” “What is worth wanting?”といったKey questionsに対する自分なりの答えを考えていく。二回目が“Empathy,” 三回目が“Loyalty”。七回目で取り上げたLynn NottageのSweatでは、メキシコへの工場移転により職を失い自身の生活や尊厳が壊される米国人労働者が登場。今の米国社会の不満や分断を理解する一助にもなった。
- 交友関係
IESEは1年目の9か月間チームメンバー固定である一方、Kelloggは授業ごとにチームが異なる。結果、IESEは狭く深い関係を築ける一方、Kelloggは広く浅い関係を築くのに適していると感じた。但し、KelloggのMMMプログラム(MBAとDesign InnovationのDual degree)は小規模で、同プログラム参加者用の部室のような場所があるため深い関係を築き易いと感じた。日本人留学生の紐帯は両校ともに非常に強い。
- 多様性
KelloggはIESEに比べてアメリカ人の割合が圧倒的に高く、学生の関心も米国にある(卒業後9割以上が米国で就職)。米国の一般常識への理解を前提とした学生同士の会話も多く、Minorityであるがゆえの発言や貢献のし難さを体感できた。例えば、任意の映画やドラマをLeadershipの観点から分析する課題で、アメリカ人3人と一緒に題材を選んだ際、彼らが知っている映画やドラマを私が知らず、議論への参加が難しかった。この経験は今後自身がMajorityに戻った際にMinority への傾聴力や共感力へ繋がると感じる。
他方、IESEはMajorityとなる国籍や文化がなく、授業内外の議論や会話を通じて、多様な国の文化や価値観を学べる機会が多い。1月にIESEの冬学期が始まったが、不確実性の高まる国際情勢について多様な立場から比較的オープンに議論できる点もIESE固有の魅力だと感じる。
生活面
Quality of LifeはBarcelonaの方が高い。Evanstonはレストランが相対的に少なく、自動車産業を除いて値段の割にQualityが低い。Barcelonaはリーズナブルで美味しいレストランが豊富。特に、酒類や乳製品、パン、コーヒーのコスパは日本よりも良い。晴天で快適な気候、リーズナブルで多様な娯楽(外食や旅行、ショッピング、海水浴等)、日本人コミュニティの規模といった観点から、Barcelonaは家族帯同者にとって特に魅力的な環境。

以上、私が感じた両校の違いをお伝えしました。短い留学生活で感じたことですので、本感想が極めて主観的かつ限定的である点にご留意頂いた上で、少しでもご参考になれば幸いです。
企画:Co 25 尾島