JFL・スペインリーグ挑戦
-みずほ銀行を退職し社会人サッカーに挑戦したのはなぜでしょうか?
僕の知っている選手たちがJリーグで活躍し始めているのを見て、またサッカーを頑張ってみようと思ったんです。24歳の時です。大学時代に中途半端な気持ちでサッカーを辞めてしまったという心残りもあったのだと思いますとはいえ、銀行員時代の2年間は全く体を動かしていなかったので、まずはみずほ銀行を退職してジムのトレーナー業とフットサル場でバイトを始めました。空いている時間に好きなだけトレーニングできるので笑。それから2年間、トレーニングで体を戻しながら色々なチームのセレクションを受けましたが、中々オファーは貰えませんでした。そして、ついに2009年にV・ファーレン長崎からオファーを頂き2年間プレーしました。
-そこからキャリアの終盤ではスペインリーグに挑戦しますが、どのような思いがあったのでしょうか?
V・ファーレン長崎を退団後、いくつかセレクションを受けていたんです。それこそアメリカやトーゴまでセレクションを受けに行ったりしていました。そうこうしているうちに3.11大震災が起きて1か月ボランティアなどをしていました。その中で自分を見つめ直すうちに誰も知らないところで最後のサッカー人生を過ごしたいと思うようになり、大学の卒業旅行で大久保嘉人に会いに行った思い出の地スペインに勝手に縁を感じ、最後の挑戦をと考えました。
-実際にスペインに来てみて何を感じましたか?
まず驚いたのが誰もバルササッカーやっていない、ということでした。他のチームはバルサを倒すためにやってるので、あのパスサッカーをやっているチームは実際には少ないんです。スペインでは小学生年代でも選手はチームを移籍するし、監督も成績が出ないと交代になる。監督が一人ひとりの個性にあった戦術を持っているので、複数の監督の下でプレーをする中で自然と色々な戦術を覚えて、それが結果として選手の引き出しの多さに繋がる。また、スペインでは理由なしに「これをやれ」といっても、小学生でも動かない。指導者がちゃんと理由も含めて説明する必要があります。そこで説得力のある説明ができない指導者には誰もついてきません。それもあって、スペインでは指導者ライセンスは、数ヶ月指導者学校でしっかりと勉強しないと取得できない仕組みになっています。育成年代において、指導者のレベルは日本と比べて数と知識の両方に差があると感じています。要はサッカー大国なんです。もちろんスペインにも悪い面はあり、育成年代の試合でも観客から大きな野次が飛ぶことは、子供がマネをするので良くないと思います。
-日本がスペインから見習うことはありますか?
これはサッカーに限らずですが、スペインの方が自然体で生活を楽しむ気持ちが強いと思います。あまり他人からどう見られるかを気にせずに、心の余裕があるような印象があります。先日起きた大停電の時も、スペインの人達は街に繰り出してお酒を飲んで盛り上がってましたし、電気が復旧した時には街中で歓声が上がっていました笑。これは日本では起きないことですよね笑。そういったところは日本がスペインから見習う点じゃないかなと思います。
現在のお仕事について
-現在の留学サポート事業について教えて頂けますでしょうか?
日本からスペインへの留学サポートを主に行っています。サッカーをメインにフットサル、テニス、ハンドボールなど他のスポーツもサポートしています。留学には短期(1週間~3ヶ月以内)と長期(3か月以上)とがあります。サッカー留学の場合は、留学生のレベルに合わせてこちらで受け入れ先のチームをリストアップしコンタクトします。バルセロナであれば、今まで培ってきたネットワークを通じてほぼすべてのチームにコンタクトが取れると思います。あまりにレベルが離れたチームに入ってしまっても本人にとってもチームにとっても良くないので、レベルにあったチームを選ぶことが重要になってきます。
-実際に留学を目指す学生(+親御様)を見ていてどうですか?
この事業をする上で僕が気を付けていることは、親御様も含めてきちんとデメリットも理解してもらった上で留学するかを判断してもらう、ということです。サッカーの場合は、年齢によっては短期・長期に関わらず留学中に試合には出られず、練習のみの参加になってしまうことがあります。試合経験を積まなければいけない若い時期に試合に出られないデメリットもあるよ、とまず伝えるようにしています。また、今は三苫薫や伊藤純也のように大学に行って、Jリーグに行って海外に行って活躍する例も増えてきたので、必ず若いうちに留学する必要があるとも思いません。それを全部理解した上で、それでもやっぱり留学に行きたい、という人をサポートしています。
スペインでプレーする上ではやはり言語の壁が一番大きいと思います。過去にスペインリーグでプレーした日本人選手を見ても、能力が高くても、言語の壁で戦術を理解できずに活躍できないというパターンが多く、それは育成年代でも同じです。通訳は付けないので、言語の壁にぶち当たって挫折することが多いですが、若いうちに壁にぶち当たり、乗り越えるということを経験して欲しいと思ってます。その経験が長期的には人生の糧となると思うので。また、スペインでは日本とは異なる指導の仕方をしてもらえるので、この経験は日本ではなかなかできません。実際に留学した学生に話を聞くと、殆どの人が満足して帰国してもらっています。
今後について
-今後について教えて頂けますでしょうか?
自分の好きなことを突き詰めたいなと思っています。サラリーマンを辞めた時点で、これからはとことん好きなことをやろうと思っていました。需要があるからやるというよりは、好きなことをやってみてそれが結果的に人のためになってお金になればハッピーという感覚です。細かいビジネスアイデアは考え中ですが、小さい頃から料理やスイーツが好きだったので、飲食店なんかが面白いのではないかと思っています。ただ、将来的には、ただの飲食店に留まるのではなく、日本のアンテナショップにしたいという野望もあります。知り合いの陶芸家がいるので、お店にショーケースを置いて購入できるようにしたり、健康に良い発酵食品もやりたいです。日本にはポテンシャルがある料理がたくさんあるので、それをスペインで広めていきたいですね。
もう少し広い話をすると、スペインに来てより強く日本に貢献したいと思うようになったので、飲食店やアンテナショップを取っ掛かりにして日本文化を広めていきたいです。日本人は僕も含めて日本の魅力を語るということが苦手ですよね。でも、スペインの人と話していると自分の生まれた地域を愛しているのを感じるし、自分の生まれた地域の歴史もよく知っています。それを見習いながら日本文化を広めて僕なりのやり方で日本へ貢献したいと考えています。
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