特集

「ウルトラニッチ」で世界へ!東大卒連続起業家 愛宕翔太さん(Taisho)が語る、アメリカでの挑戦

 私たちIESE日本人在校生は、自分たちのキャリアだけでなく、将来のビジネスリーダーとして日本の未来のために何ができるか考えていきたい、また日本の皆さまにも考えるきっかけを作りたいと考えています。

 今回は、自身が創業したIT企業を上場企業に売却後、米国MBA進学。現在は従業員数3,000人、年商1,800億円規模で、冷凍食品事業をアメリカで展開する、Ajinomoto Foods North America, Incにて、社内起業家として、ネットで、冷凍食品を売る事業開発に挑戦されている愛宕さんにインタビューしました。
 また、精神科医/受験アドバイザーの和田秀樹さんと、同氏の著書である『受験は要領』をきっかけに東京大学に合格した過去のある愛宕さんとの対談本である『成長論』が出版されており、同書に関する質問もさせていただいています。本インタビューをきっかけに興味を持っていただけたら『成長論』をぜひ手に取っていただきたいです。愛宕さんのXのアカウントはこちら

愛宕翔太さん(Taisho)について

 東京大学経済学部経済学科を卒業後、ITエンジニアの採用支援サービスを提供するコデアル株式会社を創業し、上場企業に売却。売却後は、経営統合にも携わり、1年で売上を3倍にするPMIに成功。その後渡米し、ハルト・インターナショナル・ビジネススクールでMBAを取得。現在はAjinomoto Foods North America, Inc.にて、冷凍食品をネットで売る事業開発の責任者として、社内起業家として活動中。

MBAについて

Q. MBA進学を決心なさった背景は何でしょうか?

 ストレートに言うと、ビザのためです。特定の学校に行きたいなどはなかったので、スコアメイクもそこまで時間はかけませんでした。また2年のMBA期間は、せっかちな自分にとっては長すぎるので、少しでも早く渡米し、働くためにも、1年で卒業できるMBAのプログラムを選択しました。またキャンパスの立地に関しては、ネットの仕事を一貫してやってきているので、そのメッカでもあるシリコンバレーにアクセスしやすい、サンフランシスコのキャンパスを選び、最初は学生ビザで渡米しました。創業した会社をご縁をいただき、M&Aしたのも、アメリカで死ぬ前に、どうしてもチャレンジしたかったからです。

 今の仕事は、米国で、冷凍食品を、ネットで売る事業開発です。元々、ネット領域で会社を立ち上げ、上場企業に売却するまで事業をやってきていましたし、今も冷凍食品業界という伝統的な業界にいますが、AIなど最新のテクノロジーは大好きで、常にそういうものを触り、事業開発の仕事のプロセスの中でも活用するということをやり続けています。ですが、米国に来て、特に西海岸で多くの起業家、経営者、投資家の方々と直接話をしていて分かったのは、単にテクノロジーの分野に明るくて、日本で少しばかりの実績があるといっても、全然興味を持ってもらえないということです。米国発のテック系のサービスで面白いサービスを見つけて、それを日本で独占的に契約をもらって、販売する。こういう仕事はイメージが持てましたが、どうせなら、もともとソニー創業者の盛田昭夫さんに尊敬の念を抱いており、自分たちの製品やサービスを、アメリカで売るという挑戦の方が面白いのではないか?と考えていました。

 投資家として、ソフトバンクの孫さんや、楽天の三木谷さんのように、アメリカの有望なスタートアップに投資していくやり方というのは、日本でキャッシュカウな事業をつくり、そこから再投資していく形になると思うのですが、今の僕の手元にそれほどの投資資金があるわけでもありません。となると、味の素が提供している冷凍食品には、素晴らしい商品がたくさんありますし、シンプルに考えて、その美味しいものを自分が得意なネットの仕事と組み合わせて、全米に届けられたらめちゃくちゃ楽しいんじゃないか?と思い、今の仕事をやらせて頂いています。また少し余談になりますが、米国に来てから、みんなからは、”Shota”ではなくて、”Taisho”と呼ばれています。もともと以前経営していた会社の社長を退任し、暇な時間がまとまって10年ぶりに出来た際、大好きな寿司を、みんなで握って食べるということを趣味として始めました。それがきっかけで、アメリカにきてから出会った友人には、基本的に”Taisho”と呼んでいただいています。

Q. MBAでの学びは率直にどうでしたか?(授業、ネットワーク)

 社会に出たての頃は、学歴は多少は有利に働くと思います。より良い職場に就業するチャンスに巡り合いやすかったり。ただし、卒業してから時間が経つと、次第に影響が薄れていきます。歳を重ねるにつれて、あなたは事実ベースで、何を成し遂げてきた人で、何ができる人なのですか?を問われる度合いが高まります。なので、個人的には、35歳までが一つの勝負どころだと思っていて、なにかしらわかりやすい実績をそれまでにつくっておいたほうが、さらにその実績をもとにレバレッジをかけ、さらなる挑戦の機会が得られやすくなるように思います。たしかに、24歳で最初に会社を創業した時の僕は、彼女の家にお世話になっているような状態、それでも実績が無い自分の話をお客様が聴いてくれたのは僕が東大出身だったからというのは、多少なりともあると思います。

 ですが、それはあくまで最初だけの話です。今私はこのインタビューを受けている時点で、37歳ですが、いまだに学歴や受験の話をしているのだとしたら、社会に出てから何をやってきたのだという気持ちになる部分があります。自戒を込めて、これからも仲間と挑戦を続けたいと個人的には思っています。MBAでは学校にも行っていましたが、学外に出会いを求めて、授業と並行して、VCラボというプログラムに参加させていただいていました。記事にもあるように倍率は、10倍。運良く参加できる機会をいただき、こちらも色んな方々の支援があり、ギリギリで卒業することができました。NASDAQ上場企業に売却経験のあるシリアルアントレプレナーのような人がごろごろいるプログラムで、VCをGPとして立ち上げたい人に特化したプログラムでした。当たり前ですが、プログラムは全部英語。ただここで色んな連続起業家の人たちに会うこともでき、いかに自分がちっぽけな存在であるのか?を再認識させられました。

 今は、Ajinomoto Foods North America, Inc.にて社内起業家としてありがたいことにお仕事をさせていただいていますが、この今の仕事も3-4つプロジェクトを並行して進め、事業開発をしていく仕事内容になるので、自分が自己資本で起業家として1社=ほぼ1事業で社長をやっていたときの立ち振舞とは違い、プロデューサーとして、自分の事業家としての経験も活かし、複数事業を社内外のパートナーを巻き込みながら進めるという仕事内容です。広い意味で言えば、VCっぽい要素がなきにしもあらずかもしれません。なので、ここでの学びも多分に今の役割をやらせていただく上で、生きています。

 なので、MBAの勉強だけをやっていたわけではありません。これは東大生だった頃も同じで、学校に通いながら、テック系のスタートアップで働きながら学校にいっていました。学校の中だけで閉じているのは、自分の性には合わないのかもしれません。そのせいもあってか、学校の成績は、いつも進学がギリギリできるような成績で、正直あまり良くないですね(笑)。

寿司について

Q. 寿司に着目なさったのはどういう背景でしょうか?

 シンプルに、生まれが長崎で、新鮮な魚をたくさん食べており、寿司が好きなんです。小さい頃から、寿司が好きでした。特にウニが好きで、七夕の短冊に腹いっぱいウニを食べたいと書くような子どもでした)。前述しましたが、M&Aし、会社の統合までやりきった後、一段落して時間があったので、普段これまでやっていなかったようなことでもやってみようと思い、趣味として皆と寿司を握って、食べたら楽しいだろうなと思い、寿司を始めました。趣味としてはじまったこの活動でしたが、Taisho Sushi Makingという名前をこの活動につけて、定期的に世界中の人たちと寿司を握って、食べるようになりました。今でも160件を超えるレビューがサイトには掲載されていますし、世界中の人たちと、累計3,000人ほどの人と一緒に寿司を握って食べているかと思います。(2025年4月現在)

 日本の寿司に馴染みが僕にもあるわけですが、日本以外にも目を向けると、様々な気づきがあります。例えば、ビーガンの方もいるので、その場合は赤ピーマン、シイタケ、アボカドなどを使って、工夫し、寿司を握って食べられるようにするという実験的な取り組みもしてみました。もちろん一人では出来ないので、私に寿司を教えてくれた、みこと大将という友人でもある先輩寿司大将や、それ以外にもアメリカ、日本で出会った仲間と一緒に、こういう機会を運営しています。日本人の感覚で「ん?これは寿司?」というものでも、喜んでくれることがあるので、勝手に寿司の正解を決めつけてしまわない。そんなスタンスで”Sushi”と楽しく向き合っていきたいと思っています。アメリカでもぜひ寿司も商品としてデザインしてみたいなぁ。

Q. MBAの同級生から、Omakaseという名前の回らない寿司屋がアメリカの大都市で大繁盛していると聞きました。また、最近、大手の商社がスーパーマーケット向けに寿司を卸す会社を買収しているニュースも見ました。Omotenashi寿司握り体験 等をなさっている愛宕さんとしては、アメリカの寿司トレンドをどう感じられていますか?

 こっちのトレンドは、ロール(巻き物)です。寿司といえば、握りではなくて、ロールが基本です。西東の海岸は都会だけでなく、中西部でもロール寿司のデリはあります。本当にどこにでも寿司屋がある。基本お米を食べない国なのに寿司の知名度は高く、ラーメン以上に溶け込んでいる印象を受けます。アメリカの食文化を知るうえで、おすすめの一冊があるので、ここで紹介しておきますね。『アメリカは食べる』という本がおすすめです。

1MBAでの学び、寿司について 2起業、現職について 3『成長論』、今後について

マウスオーバーか長押しで説明を表示。

関連記事

Coffee Chat

最近の記事
おすすめ記事
  1. 「ウルトラニッチ」で世界へ!東大卒連続起業家 愛宕翔太さん(Taisho)が語る、アメリカでの挑戦

  2. 複利で高まっていく経営者としてのキャリア-サーチャー/GENDA Europe Ltd. CEO 大富さんインタビュー

  3. ファクトとデータで日本の生産性向上に貢献したい-think-cell Japan社長/二代目ミスター東大 松塚さん インタビュー

  1. 入学審査官に IESEの入学審査についてのアレコレを聞いてみました その1

  2. Barcelona 実際来てどうだったか?

  3. MBAにおけるcontribution

TOP