IESEの特徴

Summer Entrepreneurship Experience Program(アントレプログラム)その2

Class of 2019のKです。少し間が空いてしまいましたが、Summer Entrepreneurship Experience(以下、SEE)で経験した金継ぎビジネスの話をさせて頂きたいと思います。

今回は私がSEEで四苦八苦した経験から学んだことについてです。 

以前のブログでもあったように、私たちはこの夏に金継ぎを使ったビジネスを始めました。金継ぎとは、漆と金で陶磁器の破損を修復する日本の伝統技法で、日本だけではなくアメリカやイギリスを中心とした海外でも少しずつ注目を集めています。また、スペインでは昨今の日本ブームを背景に日本食が大変人気で、これに乗じて金継ぎマーケットを新たに開拓するのが私たちの目論見でした。

【以前のブログ↓↓】

そこで、まずはこっちの人に金継ぎを知ってもらうためにも、また自分たちが金継ぎをより理解するためにも、家で割れた器を自分たちで継いで売ることにしました。

初めてのオンラインマーケティング!

SEEの基本的な流れとしては、対面で直接商品を販売しながら(テストマーケティング)そこで得られた知見を元に商品を改良し、最後はオンラインでスケールしていく、という流れです。

直接商品を売っていた時には、お客さんからいろんなフィードバックを受け、試行錯誤を繰り返して商品改良できました。ベースの器はボウルがいいのか平皿がいいのか、色は白系か暗めの色か、はたまた柄物か、セットで売るかバラで売るかなどといった調子で議論は絶えませんでした。

そうやって試行錯誤しながら足元では順調に売上げが立っていき、ついに教授から「次はオンラインでスケールしてみろ」とGOサインが出ました!そこで早速ホームページを作り込み、オンライン広告も打ち、結果がどうなるか楽しみだと話しながら数日待つことに。

数日後、ドキドキしながらパソコンを覗き込んでみると…

結果、セールス無し…

愕然とする我々。対面ではあんなに引きがあったのになぜ???ここからオンラインマーケティング地獄が始まります。

オンラインマーケティングは授業で少しかじった程度の知識の我々3人。教授陣にアドバイスを貰いながらオンライン広告を日々改善していきました。

「広告チャネルはFacebook? Instagram? PinterestやGoogleはどう?」

「金継ぎの潜在顧客ってどういう人?国・都市は?年齢、趣味、関心のあるブランドは何が考えられる?」

「広告費はいくら使う?どれだけの人にリーチしようか?」

「誘導先のページもつくりかえよう、もっとBuyボタン押してもらえるように」

各自がオンライン広告の打ち出し方について勉強を重ねながら広告を作り、真剣に議論をしては「今度こそは…‼︎」と期待を込めて広告を送り出していきました。一連のプロモーション活動を通じて広告を配信した人数、約10万人。

ただ、期待とは裏腹に売上は一向に伸びず、テストマーケティングの反応が良かっただけに、オンラインマーケティングでの不振は堪えました。

価値の源泉

オンラインマーケティングで四苦八苦していく中で、一つの仮説ができました。それは、お客さんはストーリーを買っている、という仮説です。テストマーケティングでお客さんと対峙しながら商品を売っていく時には、私たちに商品のピッチをできるチャンスがありました。金継ぎとは何か、もともと壊れたものがどうやって修復されたか、そうしたストーリーを話していく過程で、金継ぎに価値を感じてもらうことができたのではないか。オンラインだと、どうしても価格と見た目の勝負になってしまい、ブランド力のない自分たちにとって高い値段で皿を買ってもらうのはかなり難しい。

昔から大切にしていた皿が割れてしまった、けれど金継ぎで前よりも綺麗になって元に戻った。これが金継ぎの価値の源泉。もともとそこに金継ぎの魅力を感じていたくせに、いざビジネスを始めてみると初心を忘れてしまっていたと気づかされました。

想像以上に金継ぎに苦労させられた話

このビジネスの難しさは、ビジネスモデルにもあったと思います。商品開発して、調達して、製造して、プロモーションして、ようやく物が売れていく。お金もそうですが、本当に時間がかかる。漆、乾くのに1ヶ月かかるんです!

製造リードタイムを短くしようと、禁じ手のボンドで接着を試みたり、上に金を塗っただけのなんちゃって金継ぎも試作したりするも、どれも本物には敵いません。そうしているうちに、目利きができるようになってネットで売られている金継ぎが本当に漆で継がれているかわかるようになりました。漆で継がれていない金継ぎをインスパイア系と呼び、我々はひたすら”金継ぎ”と向き合いました。

また、作るのも本当に難しい。ネットの情報や金継ぎ師に直接アドバイスをもらって技術を獲得していきましたが、品質が安定するのに時間がかかりました。最初は市販の金継ぎキットで金継ぎを始めましたが、使い勝手が悪く次第に自分たちで道具を自作するようにまでなりました。金継ぎって奥深い。

そして最後に漆かぶれ。3人の中でまさか私だけ漆かぶれにかかりました。衝撃のかゆさでした。空気で触れている前腕が全方位かゆかったので、一時期包帯をしていたら、飛行機乗る時に警備員に呼び止められました。ガッデム。

最後に

このブログを書きながら、実は私は大学時代に起業したいと思っていたことを思い出しました。当時の私には特別に何かビジネスアイデアがあるわけでもなく、何をやれば良いのかもよくわからないまま、結局チームは解散してしまいました(今思えば全く真剣さが足りず、時間を無駄にしてばかりだったので早期解散して正解でした)。あの頃は、将来自分が起業に再チャレンジすることになるとは思ってもみませんでした。

ただ、今回は前回と違って環境に恵まれました。チームはもちろん、チームをサポートしてくれたIESEの教授陣がいなければビジネスをデベロップしていくことは難しかったと思います。IESEにはSEEの他にも、三学期に必修でアントレの授業が、夏休み後の四学期にはNew Ventureという授業があり、自分たちのビジネスアイデアを試すことができる環境があります。これらのプログラムを通じてハンズオンで学べたことは、今まで大きな組織の中でしか仕事をしてこなかった私にとってとても良い経験になりました。起業に興味のある方は、IESEのSEEを強くお勧めしたいと思います。

さて、このSEEブログの最後の締めくくりはMさんに書いてもらう予定です。乞うご期待! 

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