IESEの特徴

日本人が多いのってぶっちゃけどうなのかしら?

(2017年上旬執筆。筆者は2017年5月に卒業済み)

Class of 2017のAです。

今日は、私が受験時に感じていた、「IESEに日本人学生が比較的多いのことってMBA生活にどう影響してくるの?」という点について考えてみたいと思います。

アクシウムの調査によると、2018年卒の日本人学生数はIESEは16名、UpenのWhartonが14名、その次がLBSの12名、ハーバードの11名で、IESEの日本人人数はここであげられていたMBA中最も多い結果となりました。

日本人が多い理由は、過去に日本人の教授が在籍していたから、などと聞いたことがありますが、理由はさておき、私がIESE受験の際に、IESEに日本人が多いことについて少し躊躇を感じたのは事実です。その躊躇というのはおおまかにいうと下記の3点で、これらについて実際にIESEに入学してみてどうたったかを考えていきたいと思います。

1.    日本人が多いと英語や異文化などMBAならではの学びが薄れるのではないか

2.    日本人の受け入れ人数が多いということは、日本人学生の質にばらつきがあるのではないか

3.    とはいえ、困ったときにはやはり日本人がいたほうが頼りになるのかしら

1.   日本人が多いと英語や異文化などMBAならではの学びが薄れるのではないか

これは、IESEにおいて全くの杞憂でした。日本人が多すぎてせっかくMBAに来たのに日本人とディスカッションして日本人の意見を聞いているだけ、というような事態には陥ることは一切ありませんでした。私が入学した2015年時点では1学年に4セクションあり(2016年に5セクション目が増設)、各セクションは70名でさらにこれが7-8名で構成されるワーキングチームに分けられます。日本人は17名いたので、約4名の日本人が各セクションにいることになります。1年目はこのセクションごとで授業を受け、授業の予習やチーム課題はこのワーキングチームでこなすことになります、セクションの日本人比率は約5%だし、チームは国籍をがかぶらないように配慮されていおり、日本人が同じチームに二人いる!なんていうことにはなりません。ちなみに私のチームは、日本人(私)、台湾人、インド人、ポーランド人、アメリカ人、アゼルバイジャン人、スペイン人2人で構成されておりとてもインターナショナルでした(スペイン人は地元なので地元優先枠?で人数が多い)。ということで、せっかく海外に来たのに、同じ国籍の人と結局チームワークしなくてはいけない、というような不満を持つことは一切なく、むしろ機に応じて日本人間で効率的に助け合った(私の場合はむしろ助けていただいた、のほうが正しい)こと以外は、私の場合ほぼ日本語を話す機会はありませんでした。ちなみに、IESEの場合は、最も人数比率の多いスペイン人でも3割と、過半数を超すようなマジョリティのナショナリティがいないため、発言力の強いグループができたり、出身地ごとで学生がつるみ、「外国人」とはあまり交わらないというようなことは全くありません。もちろんそれぞれ国ごとのStudent Club(日本の場合はこのサイトを運営するJapan Business Club)が存在し、機に応じて集まりますが(やはりたまにビール片手に母国語で愚痴を言えるのは癒される)、交友関係は非常にインターナショナルなことは保証できます。

例えば、私が苦手だった会計の授業では、日本の公認会計士資格を持っている方に、Decision Analysisという統計学のクラスでは京大理系のクラスメイトに教えてもらい大いに救われた。

2.   日本人の受け入れ人数が多いということは、日本人学生の質にばらつきがあるのではないか

次に、日本人の受け入れ数が多いということはどうしてもセレクションの幅が広がり、学生の質の幅が広がるのではないか、いうという点です。正直、私も自分を「とても質の高い学生だ」と考えているわけではないが、この懸念を持っていたころは否めません。ただし、MBAにおける「質の高い学生」というのは、GMATの点数のみを指すわけでも、プロフィールがキラキラしているかのみを指すわけではないはずです(軍隊出身だとか、元バンドマンだとか、大ファミリービジネスの御曹司とか)。であると、この「質の高い」は非常に主観的であいまいな基準ということですが、私からすると、要は「こんな魅力的な人(人間性、知識、経験という意味で)が同級生だなんて!」と思える人たちが周りにいるか、ということであると解釈している。とすると、この点において、主観的ではありますが、私のIESEの同級生の日本人は非常に魅力的な人が多い、というのが私の結論である。

私の場合で言うと、特に「ソフトコミュニケーション」と「仕事の的確さ」という点において、他の日本人学生から非常に学ぶことが多く、感謝している。周りの日本人同級生の幾人かはさすが大企業の若手/中堅管理職の人たちで出身は、商社、製造業、起業家、IT、金融と多様です。私はコンサルタントにありがち、かつ性格も相まって、単刀直入でダイレクトな物言いをしてしまいがちですが、例えば、私ならむっとなってしまうような相手も物言いにも冷静に、かつ相手の状況に共感するやわらかな物言いをできる人や、いざというときに場を盛り上げて全員を楽しませることができる人、お子さんもいながら時間管理がうまく各種趣味を極めている人。ああ、こういう風に言うとお互いの顔が立ってうまくいくんだな、やこうやって盛り上げるのか(真似できないけど)、私も時間管理をしなくては、と一言一句、一挙一動をメモしたいほど勉強させてもらっています。仕事の的確さにおいても改めて日本人はピカイチで私自身も毎回感激の一言です。例えば、何かイベントがあると、しっかりタイムラインを引いて調達や準備は怠らないし、当日のオペレーションもぬかりない、そして、みんなで協力し合おうという協働精神というのが半端ない(サボろう、という精神の人がいない)。ラテンのまぁ何とかなるじゃんという精神も、アメリカの自分の優先事項に集中!という個人主義もいいのですが、ああ日本人ってすごいんだな、と改めて思う瞬間が幾度とありました。これらは本当にプライスレスでMBA後も役立つ学びであったと思います。

確かに、受け入れ人数が多いということはそれだけいろんな幅の人が入学してくるということではあります。1学年1-2人の狭き門よりは確かに倍率は低いでしょう。繰り返しながら日本人学生の倍率や平均点などは公表されていないため、私の主観的な経験に基づきますが、私の周りにいる日本人は非常に多様なバックグランドを持つ魅力的な人たちです。それぞれから学ぶことが多く、これは例えば日本人同級生が少ないと、数あるMBAにおける学びの中でも「日本人からの学び」というのは実現しえなかったことだと思います。ここで培った関係はMBA後も大事にしていきたいと思う(いい友人、かつ将来のビジネスパートナーになるかもしれないし!)。

3.   とはいえ、困ったときにはやはり日本人がいたほうが頼りになるのかしら

上記の懸念点に加えて、受験前は懸念に加えて日本人っているとやっぱりいいのかしら、とも思っていました。この点は自信をもって、困ったときに限らず「日本人が周りにいてくれてよかった」と感じています。具体的には、わからない授業があり英語だと難解すぎる場合に教え合ったり、勉強会を開いたりという学びの側面であったり、例えば、おいしいレストランであったり、体調不良の際に駆け込める病院であったりという情報交換や、と、日本人にいくらお世話になったかわかりません。また、精神面でも、「完全に素になれる場所」として、日本人コミュニティがありました(私は完璧日本育ちなので、やはりマインドは日本人です)。私は日本人コミュニティにどっぷりつかっていたわけではなく、日本人との飲み会も2-3か月に1回行くかいないか程度で、インターナショナルなIESE生活を存分に楽しんでいたが、それでもたまに、母国語で本音を言い合い、日本食をつつき合える仲間がいるのはとてもほっとしました。日本酒プロジェクトや和菓子屋さんや日本食屋さんとの協働プロジェクトなど、もっと密に楽しそうな経験を共に積んでいる日本人学生たちもいます。

まとめ

MBAでの学びへの影響、日本人学生からの学び、その他メリットと点で、IESEに日本人が比較的多いという事実が、どうMBA生活に影響するかということを振り返ってみたが、結論としては、恩恵を置けることは多々あれども、不具合を感じることは全くなかった、ということになります。

50か国以上からの学生が集うIESEにおいて、実は日本は最も人気の高い国である。例えば、各国の学生がホストしロシアンウォッカディナーやらインドディナーやらブラジリアンBBQディナーやらを開くが、ジャパンディナーは常に満員御礼、キャンセル待ちの状態、大人気である。2年目の終わりには、Japan trekという有志の日本人が企画し120人近い同級生を1週間ほど日本に連れていく旅行を日本人メンバーで企画しました(学年280人なので約4割がわざわざスペインから参加するというとんでもない人気企画です)。詳細は割愛しますが、120人を新幹線に載せ、観光案内し、もてなし、非常に骨の折れる仕事です。ただ、オペレーションの的確さ、協働精神の強さ、自ら貢献する自主性、宴会での盛り上げテクニックなどこの日本人メンバーでないとできなかったと実感しました。ケースでよく出てくるTOYOTA社等日本企業のおかげか、アニメ・ポケモンなどサブカルの影響か、日本人学生のプレゼンスの高さなのか、いろいろと相まって、多くの学生が日本に興味を持ってくれています。日本を代表し、上記のような活動を通して日本を発信していく立場として、多くの魅力的な日本人の仲間がいることは非常にありがたいし、誇らしいことであると感じた2年間でした。

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