(* 前回記事 In Brazil… (1) の続きです。)
万人のための養育を目指しているにも関わらず、裕福な人々が学費無償で国家の教育予算の多くを占める国立大学を独占し、貧困階層は学費の高い私立大学に行かなくてはならないという矛盾が発生している。就学した生徒に通学を続けさせ、教育課程を履修することを確保することもまた困難である。留年、退学の問題は特定の学年のものではなく、教育全体を通して深刻化している。
そしてこの貧富の格差はブラジルにおいて様々な社会問題を助長している。必要に足る衣食や教育機会が与えられない極度の貧困状態にある15歳以下の子供たちは2250万人にのぼると言われている。そして、国連の暴力実態調査では、多くの貧しい子供たちが麻薬密売を生存のため必要とみていることが明らかになっている。こうした貧困状況が、ストリートチルドレンの増大や、犯罪被害者の人口比率44%のリオデジャネイロに代表されるような世界最悪の治安を作り出す主要な原因となっている。
現在ブラジルではFMCSVのように教育を改善しようとしているNPOやNGOの団体は幾つも存在する。(FMCSVについては前回説明を記載しているのでここでは説明を省略) それぞれの団体が自分達の理念に基づき活動を行っており、また各州の政府教育機関が制度などを策定実行しているため、全国共通での教育制度が整っていない。そこで今回はサンパウロ内でFMCSVの協力機関となりえる下記の主なNPO‣NGO団体を訪問し面談調査を実施。
- Instituto Ayrton Senna
- Instituto Alfa e Beto
- Lemann Foundation
- Instituto Unibanco
- Instituto Paulo Montenegro
- Instituto De Co-responsabilidade pela Educacao
更にはラテンアメリカトップの大学Universidade de São Paulo (USP) にて講演会を行っていたDaniel Santos教授に無理言って時間を頂き、社会貢献のインパクト評価を行っている同氏に、これらの団体の活動効果や課題についてお話を伺った。これらの活動から見えてきたものは、若手のアイディア実現弊害や各団体の連携の少なさによるイノベーションやインパクトが限られていることである。そこで我々はそれらを改善すべく、各団体および政府を巻き込み新たなアイディアが活かされるようなストラクチャーを提案。
また本プロジェクトにてNPOやNGOに対するイメージが大きく変わった。当初はそのような団体は利益を上げないため資金繰りも厳しく地道に活動を行っているというイメージを持っていたたが、今回調査した団体はどこも立派なオフィスを構えておりファンドや寄付も十分にあるようである、中には親会社が大企業というところも幾つかある。逆に言えば本当に社会にインパクトを与えるような活動を行うためには資金調達力が不可欠である。
P.S.
貧富の差が激しいブラジルには、ポルトガル語でファベーラFavelaと呼ばれる貧困街が至る所に存在する。リオには950もあり人口の約20%を占めている。誰も住めないような山の斜面やがけっぷちなどに、小屋のような家を建てて住み着くことで形成されていくスラム街。不法占拠地であることから、番地の区割りもなく、水道や電気も整備されにくい。さらに、教育、保健衛生、福祉などの行政サービスも十分に受けられない。失業率も高く、犯罪の温床になりやすいことから、現地の人々も恐れて近づこうとしない。しかし近年ではこうしたファベーラを回るガイドツアーが人気を呼んでいる。個人的にはあまり良い企画だとは思えないが、こんなこともでもビジネスチャンスがあるのかと思うとブラジルにはまだ色々な可能性があると感じる。因みにSanta MartaというFavelaは、Michael JacksonがPV撮影を行ったことで有名。