変革を担うリーダーへ ― MBAホルダーへの提言

–トップのトーンセッティングが組織の意思決定や仕事のしやすさに大きく影響するというお話がありました。そうだとすると、グローバルMBAホルダーが日本で活躍したい場合、伝統的な日本企業のカルチャーの中に身を置くよりも、自分のリーダーシップや実力がより早く評価されやすい環境に身を置くべき、ということでしょうか?
それについては半分賛成で、半分はそうではないと思います。
確かに、自分の実力やリーダーシップが正当に評価されやすい環境に身を置くことは重要です。そのような環境では、自分の能力をより発揮しやすいでしょう。
しかし、日本企業を変えていくという観点で考えると、それだけでは不十分です。
日本企業の岩盤のように硬い組織の中で、どこが変革の「押しボタン」なのかをもがきながら見つけていく経験は非常に重要です。
そのような経験を避けて、整った環境だけを選んできた人が日本企業の変革を担えるかというと、必ずしもそうではないと思います。
グローバルで通用する環境で自分の能力を発揮する経験と、日本企業の現実の中でもがきながら変革に向き合う経験の両方が重要であり、その両方の経験を持つことが日本で大きな変革を実現するために必要だと思います。
そして、私自身は、そうした両方の経験を持ち、日本企業の変革に挑戦する人材がこれからもっと増えてほしいと思っています。
-樋口さんご自身は異なる業界・異なる企業文化の中で、どのようにしてリーダーシップを発揮し、変革を進めてきたのでしょうか?
まず重要なのは、「私利私欲でやっているのではなく、皆さんのためにやっている」と信じてもらうことです。
日本企業では、論理だけで人が動くわけではありません。「この人が言うならやろう」と思ってもらえることが重要です。
それと同時に、変革を進める上では「腹落ち感」をどう作るかも非常に重要になります。
加えて、私が意識してきたのは、できるだけ外の世界に触れてもらうことです。例えば、パナソニック コネクトの本社を東京に移転した際も、それまでとは異なる環境でより多くの顧客と対峙し、新しい気づきを得てもらうことができました。
また、変革を進める過程で、その変化を実際に体験してもらうことによって、理解と納得が徐々に広がっていきます。
-グローバルMBAで学ぶ学生に対して、どのようなアドバイスをされますか?
私自身がMBAに行ったのは、決して早いタイミングではありませんでした。しかし、あのタイミングで外の世界に出たことが、その後のキャリアにとって非常に大きな意味を持ったと思っています。
もし、外の世界に出るのがもう少し遅かったら、ここまでのキャリアを歩むことはできなかったかもしれません。
それまで私は、日本企業の中での考え方が当たり前だと思っていました。しかし、外の世界に出て、全く異なる環境に身を置いたことで、自分の考え方や視野が大きく変わりました。
だからこそ、MBAにいる間は、日本のことを一度忘れるくらいの気持ちで、グローバルなカルチャーにどっぷり浸かってほしいです。
その経験は、将来必ず意味を持つものになると思います。
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