『成長論』について
Q. 『成長論』では、若者の明日はきっと今より良くなるはずという「おめでたさ」が日本の教育システムで失われていく問題を議論なさっていました。政治的には揺れるところのあるアメリカですが、人々の「おめでたさ」という観点ではどう感じられていますか?
人による気がします。アメリカでは、日本と相対的に比較したときに、インフレが凄く、事実として、物価が上がリ続けています。AIによる波もあり、あれだけ憧れの就職先感のあった、GAFAM就職も厳しいし、悲壮感はあるでしょう。二極化が顕著であることも事実で、日本とアメリカの資産における平均値と中央値の開きの大きさを比較してみると、そのことがすぐにわかります。
アメリカにいてもそのような課題感はあるわけなので、日本の良いところ(安全、ご飯がリーズナブルな価格で美味しい、社会保険をもとにした医療もリーズナブルな価格でアクセスできる)に目を向け、感謝しつつ、おめでたさを持つこと。幸せは解釈なので、どこにいても、どんな経済状況でも心の置所一つ。そのような捉え方をアメリカでもしていたいものだと思います。
逆にアメリカの良い所は、世界中からいろんなトップオブトップの才能が集まって、切磋琢磨していること。いろんな国の文化をアメリカにいることで、体験できること。アメリカの西海岸はとにかく天気が良いので、青空を見上げたら、日本にも繋がっていて、なんか悩んでいるのが馬鹿らしくなること。というところですかね。幸せだなぁ、ありがたいなぁと、良いところに目を向けて、アメリカにきてからも変わらず、おめでたく解釈している自分がいます。
Q.アメリカは資本主義が行くところまで行っていて経済成長はしているけれども、格差が広がり治安の悪さに繋がってると思います。一方で、日本は経済成長はしていないけれども格差はさほど広がらずに治安が保たれているとも思います。その辺りの実感としてはどうですか?
そう思います。前述しましたが、日本とアメリカの資産の平均値と中央値の数字の乖離を見るとわかりやすいですよね。アメリカは平均値と中央値の数字の乖離が日本よりも相対的に大きい。つまり、トップ層の資産額が大きく、それが平均を底上げしていることがわかります。
一方で、日本はなんとなくみんな一緒だよねという雰囲気があるのもあるせいか、平均値と中央値の数字の乖離は相対的に小さくなっています。しかし、今後、日本人全員が英語を喋る必要があるかと言われればNOだと思いますが、海外の人材と対等にやりあえる人材も必要になってくるでしょう。それは商売の世界だけではなくて、政治の世界においてもそうなのかもしれません。トランプ大統領就任後、関税に関する交渉をできる人材がいなければ、苦しむのは我々日本国民になるからです。全員とはいわずとも、第二次世界大戦後の混乱期におけるような英語でGHQとの交渉にあたっていた白洲次郎さん、貧しい生まれから小学校卒の総理大臣になられた田中角栄さん。商売でいえば、盛田昭夫さん、松下幸之助さん。令和の今、昭和とは時代が違いますし、環境も違うものの、そのような人が出てくる必要もあるのではないか?と個人的には思います。
今後について
Q. 今後の展望について、教えてください。Ajinomoto Foods North America, Incでの挑戦を続けるのか、自分自身で再度起業することを目指されているのか等について、お聞かせいただければと思います。
まず人様の役に立つことが大切だと思っています。正直それができればどこでも良いと思っています。会社を売却して、しばらく仕事をしないでいたら、逆に体調を崩してしまいました(笑)。定年退職の体験をしたことはないですが、定年退職のときもこんな気持ちになることがあるのかな?などと、その時想像を巡らせました。
僕にとっては、人様の役に立つ仕事を通じて、価値を提供し、ありがとうと言われる機会があることは、とても大切なことであるとそのときに気付かされました。生涯現役という生き方をすると思います。私にとって、仕事はとても楽しいエンタメ(もちろん楽しいだけではないけれど。また仕事だけの人生はまっぴらごめんです。世界中にいる友人たちに会いたいですし、友人と家族との時間もかけがえのないものです)だからです。
振り返ってみると、まだ現役の東大生で、最初はバイトとしてスタートアップで働かせていただいていた時代も、すごく働いていたから社長にも上手く使っていただけていましたし、どうやったら会社がつくれるのか?も具体的にイメージが持てました。実際に起業すると言っていたので、起業するならという前提で知っておいたほうが良いよという情報をたくさん当時から教えていただくことができていましたし、今でもその時の社長とはお付き合いがあります。
また、少しばかりの成果を出し、M&Aできたのも、働くITエンジニアの方の立ち場から見たいものをみて、なおかつ採用に困っている会社側の立場からもものをみて、それらが重なるような提案をし、価値提供をしていたからこそだと思っています。どこにいたとしても、バッターボックス立つ機会を頂き、任されたのなら、腐ることなく、それ以上の結果を出す。その事実ベースの成果が次の挑戦の機会を更に呼んでくるし、そこでつくった成果以上に、そこでつくったチームや仲間がまた次に集まれば、爆速で、事業をつくりあげにいくことが出来る。だからこそ、地道に信頼を積み重ねるのが大事だなと。なので、今後どの会社にいるか、どのポジションかは正直分からないですが、その時にいる場所では、おめでたく解釈し、全力でバットを振ることだけはとりあえず約束したいと思っています。
インタビュアー
Class of 2025 尾島、志治
Class of 2026 辻井・岡部
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