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MBA生活2年間の振り返り ~IESEで得た学びと気づき~

こんにちは。IESE Business Schoolの2年生で、Japan Business ClubのPresidentを務めているY.Sです。

2023年8月にバルセロナに渡航してから、気がつけばもう2年近くが経ちました。 そして今月、2025年5月にいよいよ卒業式を迎えます。
振り返ってみると、この2年間は本当に多くのことを経験し、学び、考える時間でした。MBAというと「キャリアのためのステップアップ」というイメージが先行しがちですが、実際にはそれだけではなく、自分自身を見つめ直す貴重な機会にもなったと感じています。

この記事では、IESEでの生活を「学業」「就活」「プライベート」の3つの軸から振り返ってみたいと思います。これからMBAを目指す方や、留学生活に興味がある方にとって、少しでも参考になる部分があれば嬉しいです。

①学業:ケースに没頭し、仲間とぶつかり合いながら学んだ意思決定力

IESEならではの「ケーススタディ」漬けの日々

IESEの授業は、ほとんどがケーススタディ形式で行われます。
これは、実際に企業が直面した経営課題をもとに、自分自身が経営者の立場に立って考え、クラスメイトや教授とディスカッションするスタイルです。

1年目は、学校側が指定したセクション(クラスのようなもの)と、その中でのチームに所属します。セクションは約75人、チームは9人前後。これが1年間ずっと固定です。つまり、同じ仲間と毎日3〜4本のケースを一緒に読み、議論し、悩むわけです。想像以上に濃密な時間が流れます。

良かった点:実践的な学びと、自分の枠を越える視点

ケーススタディの最大の良さは、やはり“実践的な学び”に尽きます。
毎日、まるでその企業の幹部になったかのような気持ちで、意思決定を考え、仲間と議論し、自分なりの結論を出していく。この繰り返しが、自分の思考力や判断力を鍛えてくれます。

特に印象的だったのは、バックグラウンドの異なる仲間との議論。自分では絶対に思いつかないような意見が飛び出し、「あ、こういう見方もあるのか」と思わされる瞬間が何度もありました。自分の視野の狭さにも気づけましたし、逆に自分では当たり前と思っていたことがクラスへの貢献につながったりする場面もあったりしました。

また、チームで1年間を共に過ごすことで、ただの勉強仲間以上の関係性が築けたことも大きかったです。毎日顔を合わせるからこそ、どんな場面で誰がどう力を発揮するのかが見えてきたり、その中でどのようにチームとして最大限のパフォームを発揮するかを常に考えさせられたりしたので、自然と多様性のある環境でリーダーシップを発揮する訓練になりました。

悪かった点:準備の濃淡、議論の質、そして“運要素”

一方で、全てが完璧というわけではありません。

1年目の後半に入る頃には、就活にウェイトを移す人が出てきたりすることで授業の準備をしてこない人も増えてきて、議論がやや表面的になってしまうこともありました。せっかくのケースも、皆がしっかり準備をしてこないと、どうしても学びの深さは薄れてしまいます。

また、議論がどの方向に転がっていくかは教授の力量次第という面もあり、ファシリテーションが弱いと、話が散らかって終わってしまうことも。全体の学びの質は、クラスや教授にかなり左右されます。

そしてもう一つ大事な点は、セクションやチームのアサインが完全に「運」であること。人によっては、あまり活発でないチームに入ってしまったり、相性の良くないメンバーと1年を共にすることになることもあります。環境の影響が大きい分、そこは仕方ない部分もあるなと感じました。

世界と比べて、見えた自分の「現在地」

MBAに来て本当に良かったと感じたのは、こうした日々のケースを通じて、グローバルなピア比較ができたことです。

「自分のこのスキルって、世界のトップMBA生たちの中でどれくらい通用するのか?」
「他の学生は、どういう場面で強みを発揮しているのか?」

「どういったバックグラウンドを持った人がどんな場面でバリューを発揮するのか?」
こういったことを日常的に常に意識しながら過ごせる環境は、本当に貴重でした。

ファイナンスやマーケティングの知識自体は、今や本でもオンラインでも十分に学べる時代です。YouTubeですら高度な内容が手に入るようになりました。

でも、その場で空気を共有し、濃密な議論を交わすからこそ得られる気づきは、やはりリアルなMBAならではの価値だと、心から思いました。

②就活:明確な目的意識と柔軟な思考の両立

MBAは、一般的にキャリアの転換点やステップアップの手段と位置付けられることが多く、IESEでもほとんどの学生が入学前から明確な目標や志望業界、地域をある程度定めた状態で入学してきます。私自身も例外ではありませんでした。

特に私費での留学の場合、金銭的な投資が非常に大きいため、「なぜMBAに行くのか」を入学前に徹底的に突き詰めておく必要があると思います。この点が曖昧なままだと、せっかくの学びの機会がぼやけてしまい、得られる成果も限定的になってしまう恐れがあります。ただ、実際にIESEでの生活を送る中で強く感じたのは、最初に立てたゴールに「固執しすぎない柔軟さ」の重要性です。

日々のケースや仲間との議論を通じて、自分の思考の癖や強み・弱みが浮き彫りになっていく中で、当初考えていたキャリアの方向性が、果たして本当に自分に合っているのかを再考する場面が多々ありました。
例えば、特定の業界出身のクラスメイトがクラスに与える影響力の大きさを目の当たりにし、自分がこれまで持っていた「志望」に疑問を感じることもありましたし、多様なバックグラウンドや様々な国での業務経験を持つことと、グローバル環境リーダーシップを発揮できるかどうかには必ずしも相関がないことに気づかされたこともありました。こうした中で、当初のゴールにしがみつくのではなく、自分の意志や価値観に照らして、柔軟に考え直すことの大切さを学びました。

もちろん、家族帯同やローンの返済など、自由にキャリアの方向性を変更できない事情を抱える人も多くいます。ただその中でも、自分にとって何が最優先事項なのか、どこまでが調整可能でどこからが譲れないのかを常に意識して、定期的にキャリアの地図を見直していく姿勢はとても重要だと感じました。

③プライベート:自分と向き合う“贅沢な時間”

MBA生活の中で、もう一つ大きな財産となったのが、プライベートの時間です。

仕事に明け暮れていた社会人生活を経て、久しぶりに「自分の時間」を意識的に確保できたことは、精神的なリセットにもなりましたし、人生全体を見つめ直す上でも非常に貴重な機会でした。

IESEはカリキュラムが厳しいことで知られていますが、実際には2年目からは選択科目制となるため、自分のスケジュールをある程度自由に設計できます。週2〜3日の授業だけに抑え、残りの時間は旅行に行ったり、本を読んだり、ただボーっとしたり…。そうしたゆとりのある時間が持てたことは、何よりの贅沢でした。これは、2年生のプログラムを選んだ大きな利点の一つでした。

私自身は学校のサッカーチームにも所属しており、週に1〜2回仲間とプレーし、そのままパブで談笑する時間がとても楽しみでした。久々に本気でスポーツに取り組んだ結果、右膝靭帯の半断裂と左足首の骨折という大怪我も経験しましたが、それすらも今では良い思い出です。

また、スペインを拠点にしていたからこそ、ヨーロッパ各国への旅行も非常に手軽でした。格安航空を使えば、1〜2万円で週末旅行が実現できますし、IESEには世界中から学生が集まっているため、旅行先での現地情報もすぐに手に入ります。こうした「留学ならではの体験」も、MBAの大きな魅力の一つだと実感しました。

【総括:後悔しないMBA生活のために】

「学業」「就活」「プライベート」の3つの視点からIESEでの生活を振り返ってきましたが、私がこの2年間を通じて一番強く感じたのは、「バランス感覚」の大切さです。

人それぞれ置かれている環境は違います。社費か私費か、家族帯同か単身か、就職活動の必要性があるか否か。それらによって、注力すべき領域は自然と異なってきます。

だからこそ、他人と比較するのではなく、自分自身がどのようにMBA生活を送りたいのか、何を優先したいのかを明確にし、日々の意思決定に落とし込んでいくことが何より重要だと感じました。

特に、SNSや周囲の声に流されやすい今の時代においては、自分の価値観を軸にした判断基準を持ち続けることが、満足度の高い留学生活を送る鍵になると思います。

私自身、この意識を持ち続けたことで、2年間を心から「来てよかった」と思える時間にすることができました。

これからMBA受験を検討している方、あるいはこれからMBA生活が始まる方にとって、少しでも参考になる部分があれば幸いです。

Japan Business Clubでの二年間振り返りミーティング

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