現役IESE生が、ビジネス界で活躍する起業家・経営者に直接会いに行き、インタビューするシリーズ。今回はプログリット創業者の岡田氏が登場する。
岡田氏は、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2016年にプログリットを創業。「英語コーチング」を武器に急成長を遂げ、創業6年で東証グロース市場に上場を果たした社会が注目する若手経営者だ。トークテーマは、「創業経緯」、「コンサル経験は起業に役に立つのか」、「理想のチームの作り方」など多岐に渡り、岡田氏が語る「起業キャリア」の魅力に迫って行くー。
岡田 祥吾(おかだ・しょうご)
経歴:
株式会社プログリット代表取締役社長。大阪大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。2016年9月に株式会社プログリットを創業し、2022年9月、創業6年で東証グロース市場に上場。2021年、Forbesが選ぶ「30 UNDER 30 Asia」に選出。著書に『英語学習2.0』(KADOKAWA刊)。
創業経緯
―プログリットは、「世界で自由に活躍できる人を増やす」というミッションのもと活躍されていて、売上も利益も順調に伸びていますが、まずはその創業の経緯をお聞かせ頂けますか?
岡田:
僕の父が経営者だったこともあり、子どもの頃からなんとなく将来経営をしたいな、という思いはありました。子供の頃の誕生日プレゼントには、金庫やレジを買ってもらったりして、お金いじりや出し入れが好きだったんです。本当に起業をしたいと思うようになったのは、大学で1年間アメリカに留学した時に今の共同創業者の山碕と出会った時です。こんなに優秀な人がいるんだと思って、こいつと一緒に会社作りたいな、と。
とはいえ、力不足なので一度はお互い就職しようということで、僕はマッキンゼー、彼はリクルートに就職しました。マッキンゼーに入社してからはずっとビジネスアイデアを考えていました。2年経った頃にパッと思いついたアイデアがあって、それを山碕に電話して伝えたら、確かにそれはすごく良い、一緒にやろうということでお互い会社を辞めて、会社を作ることになりました。
―最初は家事代行サービスでしたよね。
岡田:
そうですね。まずは資金調達をしようと投資家周りをしたのですが、誰も出資してくれる人がいなくて。自分たちと、自分たちが持っているアイデアの相性が良くないと気づきました。家事代行サービスは、思い入れがあるというより、儲かりそうだというニーズから入っていたんですよね。そうではなくて、自分たちが本当にやりたいことをやろうと。それで、一回資金調達は止めてもう一回ゼロベースでアイデアを作ろうと2人で話したんです。
儲かるか分からないけど、自分たちが本当にやりたいことをパッションドリブンで考えた結果、英語に関連したビジネスを思いついたんです。英語が出来ると世界の広がり方が全然違うとは留学時に感じていたんですけど、当時日本にあった英会話スクールでは変わらないなとも感じていました。マッキンゼーの同僚が英会話スクールに通っていたのですが、あまり効果が無くて。であれば、ゼロベースで英語業界を考え直して、本当に英語力が伸びるサービスを1から作ったら、僕たちだったら良いものを作れるんじゃないか、と考えた結果、今のコーチングというスタイルに行き着きました。
英語コーチング
―最初からコーチングというスタイルを考えられていたのですね。
岡田:
はい。僕らのもう一つのキーワードが“やり抜く”ということなんです。”GRIT”です。
それは2人が今まで人生で大事にしていたことだったので、“やり抜く”というのは結構キーワードなんじゃないかと。それで「英語をやり抜く」というスタイルで何かサービスを作ろうとなった時に、人がサポートしてコーチングしていけば、英語をやり抜けるんじゃないか、と考えたんです。
―当時は英語というと英会話が連想されて、本当にコーチングにニーズがあるのか?という部分で大変な思いをされたと思うのですが、どうやって乗り越えたのでしょうか?
岡田:
やはり、投資家を入れないと決めていたのが大きかったと思います。そもそも僕らはパッションドリブンに行くと決めた時点でもう投資家は入れないと決めていたんです。全部自己資金でやろうと。資金調達をすると投資家の方を向いて意見を聞いてしまうじゃないですか。そうするとブレると思ったんです。僕らがやろうとしていることは新しいことだから、人の意見を聞くべきじゃないと思ったんです。そうすると本当に自分たちがやりたいことができるよね、と。それに儲かるかも分からなかったですしね。
―起業をする上で、自分のパッションドリブンで自分がやりたい事業をやっていくのと、ニーズから逆算して事業を考える2つのタイプがあると思うのですが、自分がどちらのタイプかを見極めるにはどうしたら良いでしょうか?
岡田:
僕の仮説は、優秀な人はニーズから考えるのがいいのかなと思っています。僕は自己分析すると、優秀じゃないんですよ。これを言うと「またまたー」と言われてしまうのですが、自分のことを頭が良いと思ったこともないし、多分実際頭が良い方でもないんですよね。どちらかというと感覚的な人間なんです。なので、パッションでやった方がうまくいくタイプだと分析はしています。
起業家にコンサル経験は必要か
―感覚的な岡田さんがマッキンゼーに入られて少し論理的になったとお聞きしました。IESEではMBA直後にコンサルに行きその後起業する*人も多いのですが、コンサル経験が起業する際に活きたことや邪魔してしまったことはありますか?
*IESEでは卒業後5年以内に30%の人が起業する
岡田:
コンサル経験が起業の邪魔になってしまう人はかなりいると思います。僕は幸運にも邪魔になっていないのですが、それはおそらくコンサルに染まりきる前に2年で辞めたからだと思います。コンサルはいかに合理的であるか、論理的であるかが重要視される世界じゃないですか。一方、論理的に考えると無理だと思われることに果敢に挑戦して、事を成し遂げるのが起業家なんですよね。コンサル的に論理的に分析して、資料に落とすと、「不可能です。やるべきではない」で終わってしまう。
-そういう意味で言うと、起業したい人にはコンサルはあまりお勧めしないですか?
岡田:
僕自身はコンサルに行って良かったなとすごく思ってるんです。やはりビジネスをやる上で、論理的に考えるのもすごく重要なことで、僕はもともとそこが弱かったので。それが身についたっていうのは非常に良かったなと思います。また、僕の場合は新卒でマッキンゼーに行きましたが、社会の厳しさを教えてもらったというのもあります。良い修行になったかなと。
メンター瀧本哲史さんとの出会い
ーマッキンゼーで人との良い出会いがあったとお聞きしました。そのうちの一人が瀧本哲史さんだと思うのですが、実際、どのような方だったのでしょうか?
岡田:
瀧本さんとはマッキンゼーを辞めた後にお会いしたんです。僕のマッキンゼー時代の上司に「経営を教えてくれる優秀な人を紹介して欲しい」と頼んだら、「一人すごい人がいるから紹介する」と言って紹介してもらったのが瀧本さんでした。実際会ってみると、、まぁ強烈でした。(笑)
何が強烈かというと、まず、ビジネスの理解速度が、尋常じゃなく速いんです。こちらが少し喋るだけで、ビジネスの本質を全部掴んでしまうんです。「このビジネスって、これとこれとこれがKPIだよね」みたいな感じで。マッキンゼーの中でも彼は特別ですね。才能だと思います。 ビジネスの本質を掴むのがすごく得意な方だったんで、「次はこうした方がいい、その次はこうした方がいい」とアドバイスをもらったのですが、施策の精度がものすごく高かったんですよね。
この人の言うことを疑っても仕方がないと思っていたので、僕らはもう言われたことをひたすらやることにコミットしました。瀧本さんは、最初にお話をした時点で「この事業は絶対に上手く行く」と仰っていました。それまで誰にもうまくいくと言われたことがなかったのですが。その後も瀧本さんにはずっとメンターとして入っていただいて、一番最初の株主にもなって頂きました。
―プログリットは、そこから急成長して2022年に上場を果たしました。元々は外部資本を入れないようにしようという考えだったと思うのですが、何か変化はあったのですか?
岡田:
瀧本さんに入っていただく前に、僕と山碕の2人で、社員ゼロでやっている中で、2人だけでは限界があるなと感じたんです。成長しない、と。で、プロの方に入って頂こうということで瀧本さんに入って頂くことになって、初期のミーティングで言われたのが、プログリットの商売的にはもう上場した方がいいと。その約1年後社員が30名くらいの時に、社員の前で「3年後に上場します」と宣言しました。実際は1年伸びてしまって、4年後になったんですけど。
上場する時に狙っていたことは、一つは信頼性と認知度の向上です。もう1つは、M&Aです。僕らはエクイティ調達をほぼしてなくて上場前に10%くらい個人投資家が入ってるんですけど、VCとかは入ってないんですよ。M&Aするというのが1つの大きな戦略の中で、エクイティの活用とデッドファイナンスの活用のし易さが上場しているのとしていないのでは全然違うんです。正直、上場してない小さい会社がデッドファイナンスって本当に難しいんですよ。それもあったので、M&Aするためにやっぱり上場しようと。
後編に続く
卒業生が5年以内に30%起業するIESEにおけるアントレ教育についてはこちらを参照ください!