スペイン語

IESEの Business Spanish Program(BSP)について(令和最新版)

Co25のTaisukeです。IESEに興味を持っていただいている方から、「スペイン語はどれくらい必要ですか?」「BSPでどれくらい学べますか?」という質問をよくいただいており、BSPについて書いた以前の記事が2021年、2018年と少し古いため(そして2018年のものは唐突なナンパ武勇伝が半分を占めているため)、最新版のBSP体験記を書いてみようと思いました。ご覧の通り長く、かつマニアックな話に脱線気味であるため、若干ディスってしまった2018年の記事と比較いただくと何というか、陰と陽の両方の側面からBSPをより深く理解いただけるのではないかと思います。写真は1年生のBSP終了後に先生も交えてイタリアンピザ屋に行った時の写真です。

※文章中のスペイン語について、本来はスペイン語のアルファベット、記号(¡、¿)で書くべきであるが、環境固有文字となるため英語と同様の表記とさせてもらった。

はじめに

スペインにもいるんだなと思った蝉が鳴かなくなったことに気づいた時、社会人になってから最長である、3か月の夏休みが終わろうとしている。

情熱のインターン、懐かしの日本、あえて何もしない日々。そうした経験を経てパワーアップした僕たちは、来週から再びキャンパスに戻ろうとしている。

授業の99%がケースメソッドであるIESEでは、レクチャー形式の授業は希少で、その新鮮さと、成績プレッシャーはあるものの基本先生の話をレスポンスを入れながら聞いていればいいというイージーさのおかげで、一種の休憩時間のようだと冗談めかしていう声もある。

その珍しいレクチャー形式で、かつ成績にも無縁な、しかしある意味最も過酷でどのケースよりもハードスキルとして「役に立つ」授業がある。そう、BSP、Business Spanish Programだ。

今回は、2年生の夏はインターンを口実にサボったものの、1年生の特に夏休みの間は真面目にBSPと向き合った僕の経験と成長について話そうと思う。

筆者のスペイン語力について

大学の第二外国語でイタリア語、会社の海外研修(ブラジル)でポルトガル語に触れた経験があり、ラテン系三言語のうち2つはある程度押さえている。地図を見るとわかる通り、スペインはポルトガルとイタリアの間にあるので、文法や語彙も両者の中間くらいにある(が実際はそうでもない)ので割と導入はスムーズだった。

留学前の数か月でスキマ時間で入門書を何度か読む程度からスタートし、1年生時の夏のコースではM2(後述)で始まり、そのうち何度かの留年(後述)を挟み1年生末にM5まで終了。スーパーや店での注文、病院の予約等最低限の会話のやりとりは可能。平易な文章なら推測を交えながら読めるようになった。

IESE BSPについて

ビジネスレベルで通用するスペイン語力を養成することを目的としたプログラムで、実践的な会話、ビジネス語彙、TPOを弁えた表現・文法を中心に教えられる。

レベルは1~11段階に分けられており、Graciasしか言えない本当の初心者でも、一歩ずつ進めていけば確実に上達するように設計されている。

BSPの実施時期・時間

1年生

 入学前の8月後半、希望者には二週間のインテンシブコースが用意されている。(例年100人前後が参加している様子)

事前にオンラインの文法試験、初日に口述試験でレベルテストがあり、その結果によっては何段階か飛ばして受講開始することができる。どのレベルであっても原則全て授業はスペイン語で教えられる。そう、いきなりスペイン語でスペイン語を教わるという洗礼が待っている。これは、英語を交えると甘えが出て学習効果が落ちるというIESE側の配慮と、バカンスで人手不足になる8月に、バイリンガルのスペイン語教員を大勢確保するのは無理という現実的な事情の二つがあると思う。クラスの構成だが、低レベル帯ほど人数が多いので、大教室に20人~なることが多いが、少し上のクラスから始まると、5~6人でワイワイやることができ、IESE第二のチームメイトと言えるくらい仲良くなれると思う。実際僕は、BSPフレンズとすごく仲良くなり、一緒にセビリアに闘牛を見に旅行に行ったり、定期的に集まって家族ぐるみで付き合いをするようになった。

 授業は朝9時~夕方6時までで、「まだ明るいから海でもパーティーでも行けるよ!」という学校のアドバイスとは裏腹に、毎日疲労感で帰宅、夕食、休憩、そのまま寝るというサイクルに概ねなる。これに加えて、休憩中は他の受講生と自己紹介しながらガンガンお喋りするし、日本人同士や家族とも話すので、3つの言語に高密度で晒されて脳が凄く疲労しているのを感じた。

 学期が始まると、BSPは通常授業後の15:30-17:00に行われる。1学期は水金の週二回、2学期以降は月水金の週三回開講される。出席点のような物はないが、休み過ぎると昇進試験(後述)の対象にならないので注意。また、BSPまで手が回らないと感じたときは、リタイアを申し出ることは可能。一旦降りると再起不能(リタイア)となるわけではなく、次の学期から復活できるなど、柔軟な対応をしてくれる。実際厳しいIESEプログラムや就活と並行してBSPにコミットし続けるのは至難の業で、体感半分以上はドロップアウトが出たと記憶している。なので、「もう無理…」と思っても、勇気ある撤退は何も恥ずかしくない。

2年

 1年生同様、夏のインテンシブプログラムに参加できる。参加資格はなく、1年生の間BSPを全く取っていなくとも、最初のレベルから初めて巻き返しを図っていける。学期開始後は、2年生向けに昼休みに開講される。(スケジュール固定の1年生と違い、2年生は授業の組み方でスケジュールがバラバラなので、最大公約数的な昼休みに設定されている9

レベル(モジュール)

※Class of 2025向けなので、将来の学生向けとは異なる場合があります。

 上記のように、Module 0から始まり、Module 10で終了。1年生のうちに終了できると、2年生の選択科目でスペイン語開講の科目が履修可能となり、またMBAの学位が「バイリンガルMBA」として認定される。
 ただし、学期が始まってからは細切れの時間で進むので、だいたい1学期かけて、試験(後述)をストレートか1ミスくらいで通れれば、1~2モジュール進めるかなというスピード感となるので、M0から始まった場合は、卒業までにM10を卒業することは、相当の努力が必要になるのは言うまでもない。MBA中は就活、勉強、起業準備、家族や旅行など各人にとって優先順位があるはずなので、何にリソースを割くべきかという思考は常に働かせておいてほしい。
 本記事執筆時(2024年8月末)、僕はM2からスタートし、M5までしか到達していないので、M0~1は他の日本人、M6以降は1年生時点でBSPを卒業したブラジル人チームメイトからの伝聞となるが、記事の本質には関係しないと思うのでよしとする。

日常会話フェーズ(M0~M3)

M0-1:アルファベットの読み方、Hola!など基本のあいさつをゆっくり学ぶ。

M2~M3:基本的な構文(肯定分疑問文 *なおスペイン語は肯定も疑問も同じ文型で、声のトーンで表現)、動詞の活用を小さいグル―プに分かれたロールプレイをしながら学ぶ。M3では過去形(線過去、点過去)、進行形等基本的な時勢についても学ぶ。

ビジネススペイン語(M4~)

M4~M5: これまでの内容の反復練習を、ビジネス語彙を交えながら行っていく。また、ラテン系言語名物、直接・間接目的語とその組み合わせについても学ぶ。ロールプレイも、シナリオ(家主と家を仮に来た学生に分かれてを与えられての価格・証券交渉等)のグループディスカッション、ある事柄(例:キャリアフォーラムに来るどの会社の話を聞きたいか?)について自分の意見を発表する、ビジネスでの適用を念頭に置いた内容となる。後半では、命令形、接続法、未来系等、新しい文法と、その分だけの動詞の活用も覚えていくことになる。だんだん疲れてくる。

M6以降

より込み入った文法や語彙、フォーマルな表現について学んでいく。ロールプレイは、最終的にはMBAの授業さながら、スペイン語で書かれたケースを読んで討論する形となる。

昇進試験について

M0~M3までは無試験で進むが、M4から始まるビジネススペイン語への「関門」として口述・筆記試験が行われる。M4以降は、モジュールの最後に毎回同様に試験が行われる。

筆記試験

日本の高校の英文法の試験とかなり似ている。文章の途中が虫食いになっているので、当てはまる動詞(目的語、前置詞、etc)を正しい時制と活用形で書け、図(例:家具や衣類がたくさん置かれている部屋)の状況について説明する文章を3つ書け、与えられたリストの中の動詞とそれに結び付く名詞を線で結べ、等。後のモジュールでは、前述のようにケースを読んで問題に答える形式となると聞いている。

口述試験

個人試験とグループディスカッションの二形式に分かれる。個人試験は、一人ずつ呼ばれて試験室に入り、担当試験官の指示に従い回答していく。例えばM3の卒業試験では、「IESEに来る前は何をしていた?」、「この1年の思い出は?」を簡単に述べるように言われた。と言っても、授業中のロールプレイで繰り返しやっていた内容であり、しっかり身について自分の言葉で自信をもって話しているかを見られていたと思われる。

グループディスカッション:M4以降はグループディスカッションが取り入れられる。こちらも、授業中にやったロールプレイを、授業とほぼ同じシナリオで、先生のアシストや辞書なしできちんとこなせるかを見られていた。

評価

Class of 2025の場合、両者の得点率がそれぞれ70%を超えていた場合昇進が認められていた。足りなかった場合は、残念ながら同じモジュールをもう一回となる。逆に、70%のボーダーを大幅に上回った場合、特例的に飛び級が認められるケースがあるらしい。

僕は学期開始後、忙しくてBSPに身が入らなくなり、M4⇒M5に昇進できず留年の憂き目を見た。留年すると(当たり前だが)一つ下のクラスに合流することとなり、これまで一緒に頑張ってきた仲間と分かれることになるので悲しかった。しかし、クラス替えは新しい人と仲良くチャンスでもある(実際そうなった)ので、前向きにとらえることにしていた。

図:無情にも告げられるBSP留年

コラム(読み飛ばし可)

IESEでスペイン語は必要なのか?

IESEはキャンパス内は英語だけで過ごせるよう全力で配慮しているが、そうは言ってもスペインの学校なので、バルセロナの生活を楽しむためにもある程度のスペイン語は必要だ。

バルセロナの英語の通じなさは東京より少しマシな程度で、カフェでの注文やスーパーでの店員とのやり取りにある程度は話せた方がいい。それに、当然在学中にはスペインの他の街に行くことはあり、田舎の方になると英語は全く期待できなくなるので、サバイバルのためにもぜひ勉強をお勧めしたい。

また、IESEはスペイン語話者が多く、彼らともっと距離を縮めるためにも有用だと思う。

おすすめの教材はある?

マンガ好きなら、バルセロナの大きな本屋に行くとだいたい巨大な日本の漫画コーナーがあり、一冊10ユーロくらいで買えるので、何回も読み込んでいるような作品がある場合は、それのスペイン語版を何冊か買うとサクサク読めるのでおすすめ。
後は、バルセロナの人は優しい(し明らかにヒマそうな)ので、例えばスーパーに行った時、店員さんに指さして「これスペイン語でなんていうの?」って聞くと大体優しく教えてくれる。最近バルセロナはオーバーツーリズムで英語しか話せない外国人に辟易気味なので、腰低めにたどたどしいスペイン語で頑張っている感じを出すと歓迎されるように感じる。

南米のスペイン語とスペインのスペイン語は違う?

 歴史的経緯から南米大陸ではスペイン語が話されているわけだが、同級生へのヒアリングの結果、スペインスペイン語と南米スペイン語は「結構違う」、南米スペイン語でも国が違えば「ちょっと違う」、だけどどのスペイン語話者同士でも問題なく意思疎通できる、というのが結論らしい。
 他の言語にも通ずる話だが、ある言語がその言語の本場ではない、別の国で話されるとき、その言語の話し手はノンネイティブであり、また「正しい」言葉遣いより「通じる」言葉遣いが必要とされるので文法は簡略化される傾向にある。言語学でピジン、クレオールと言われるものである。
 南米スペイン語は、例えば二人称と三人称が同じ活用となるように活用形が簡略化されている。また、同じ言葉が別の意味を持つことがあり、スペインでは問題のない言葉でも、南米ではとんでもない意味を持つことがある。
 一例として(「私の趣味は睡眠なの」とよく言っていた脱力系美人の先生が嬉しそうに言っていた) ”Coger”という動詞はスペインでは取る、つかむくらいの意味で使えるが、南米では性行為を意味し、「タクシーをcogerしたい!」と言ってしまった日には日本から来た異常者が誕生する。

スペイン語は難しい?

文法面では、
 ①三単現と過去形くらいしかない英語に比べて活用形が数十個もある
 ②名詞に男性名詞・女性名とありそれまで覚えないといけない
 ③形容詞+名詞でなく逆の名詞+形容詞である
等とっつきにくいところがあり、特にMBAに来たばかりの頃は他にも大量のインプットがあるので、こんなに覚えてられねーよとなってしまうのは事実であると思う。
 一方、発音面でほとんど日本語と同じトーン、ローマ字読みで話すだけで「お前めっちゃ発音いいな!!」とほめてもらえるのは日本人最大のアドバンテージ(唯一、巻き舌はかなり難しいのだが、スペインに縁もゆかりもない日本人がそこまで求められる必要はどこにあるのだろうか?他はちゃんと話してるんだから聞き手の脳内で補完しておいてくれ、というマインドで割り切ることにしている)。

終わりに:BSPやった方がいい?

前述のとおり、日本語と同じように発音するだけでとても綺麗なスペイン語に聞こえるらしい。MBA中は、英語の発音や語彙などで他国の同級生に劣等感を感じ続ける日々なので、ちょっと話すだけで「すごい、すごいよ!!」と言ってもらえるスペイン語は「え?普通にしゃべってるだけだよ!笑 どうしたの?笑」って気持ちになれる癒し要素だったので、是非やろう!

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