(* 前回ポスト:「IESEのカリキュラムは本当にハードなのか (1)」の続きです。)
ハードさは「人による、やり方による」とお答えしているのにはいくつか理由があります。学校が設定するカリキュラムは、上記の通り他校と比べて量が多いかもしれません。しかし授業数が少ない他校の学生が暇な訳もなく、その分、予習・復習や課外活動に時間を割いているはずです。どの学校へ行こうとじっくりと勉強しようとされている方にとっては、IESEのハードさはあまり問題にならないのではないでしょうか。一方、1年目からクラブ活動もケースコンペも、と授業以外に色々取り組みたい場合には少し苦労する面もあるのではないかと思います。ビジネススクール生活をどのように過ごしたいのかによってハードさに対する印象は大きく違ってくるのではないでしょうか。これが、「人による」の一つ目です。
「人による」二つ目は単純に個人の能力、経験の問題です。IESEではほぼ毎授業で新しいケースに取り組むことになるので、ケースを読んでおかなければ授業で何を議論しているのか分からず、授業に参加する意味がありません。従って、少なくとも何を議論しているかは分かるレクチャー方式よりも予習をサボることが難しく、必然的に読む量は多くなります(当然ケース方式でも、レクチャー形式同様教科書やテクニカルノートを読む必要があります)。従って、英語のリーディングが遅ければそれだけ予習に苦労することになりますし、逆に速く読めればその分思考に時間を割けるため有利です。また、初学者にとって取っつきにくい会計や、定量分析を既に身につけている方も、大きなアドバンテージを得られることになります。
一方「やり方による」理由一つ目は、上手いスケジューリングやメリハリの付け方によって、負担を軽くすることが可能だからです。(そしてIESEの学生はタフワークロードに曝されることにより、これらのタイムマネジメント能力を身につけることが期待されています。)前述の一週間を例に取れば、「火曜は昼間から酒を飲んでいる可能性が高いから、夜に水曜の予習をやるのは難しいかも。日・月の間に予習を終わらせておこう」とか「金曜のマーケティングのケースは量も多いし、重要論点っぽいから時間をかけたい。代わりに金曜午前中のGLOBEはレクチャーだからケースはなしか。テックノートは斜め読みしておいて重要そうなら後日再読しよう。」と考えます。事前にラフなスケジュールを把握できているかどうかによって、効率が大きく変わってきます。単純なことですが、これをやらない人が何と多いことか。上手く自分をマネージしましょう。なお、これらの「やり方」は真面目なバージョンです。毎回のケースを斜め読みで済ませ(もしくは全く読まず!)、何となく意味のある発言をすることで授業を乗り越えていく強者もいますが、こちらは僕の専門外。
最後にもう一つ、効率に大きく影響する「やり方」ファクターとしてチームワーク、チームマネジメントの巧拙が挙げられます。特に重要なのはチームアサインメントにおいて、誰が何をやって何をやらないかです。チームとしての宿題である以上、各アサインメントに対して何らかのインプットは必要ですが、全てをやる必要もありません。自分の得意分野でリードし不得意分野は他メンバーのフォロワーとなる方法、逆に自分の不得意分野でリーディングポジションを取ることで勉強の機会とし、得意分野については他メンバーのサポートに留まる等、色々な方法があります。前者は投入時間に対する成績、後者は時間に対する学習効果を優先したパターンです。成績と学習効果の最適バランスはチーム全体としての価値観にも左右されますが、両方を追うと効率性が犠牲になるという点は意識した方がよいように思います。時には他メンバーのアウトプットに若干の不満があっても、それを完璧とすることは諦める、といった割切りが必要になるかもしれません。全部自分でやろうとしないこともマネジャーの大切な資質です。なお、チームアサインメントの工程管理をきちんと行うこと、チーム内の良好な関係や士気を保つことが重要であることは言うまでもありません。
という訳で、就職活動をする必要があり、課外活動もしっかりやりたくて、英語を読むのが遅く、会計や定量分析の経験がなく、タイムマネジメントが下手でチームワークも苦手、と全てに当てはまる方にとっては恐ろしくハードなプログラムですが、そうでもなければ何とかなります、というお話でした。
ちなみに、2年生になると状況は一変し、スケジュールの自由度は非常に高くなります。1年生以上にハードなスケジュールを組むことも可能ですし、逆に月数回だけ授業に出てきて旅行をしまくる人もいます。僕も今学期は夢の週休5日スケジュールを組み、独学でマネジメント以外の専門分野を作る計画です。1年目はがっつり勉強し、2年目は授業以外でも色々やってみたい、という方には、非常によいプログラムなのではないでしょうか。