こんにちは、Class of 2020のFMです。今回はMBA留学をお考えの方やBusiness Schoolに在学中で交換留学をお考えの方へ向けて、MBA留学における一つの醍醐味である交換留学制度について、私がどのような目論見で交換留学制度を活用して結果としてどうであったのか、という観点でお伝えできればと思います。もし今回の投稿内容についてリクエストや気になる点がございましたら、是非問合せフォームをご活用下さい。
Contents
o はじめに
まず交換留学制度をご存知ない方のために、IESEにおける交換留学制度を例にとって簡単に説明したいと思います。制度の説明が不要の方は読み飛ばしてください。IESEでは二年間で5つの学期があり、交換留学制度を利用する事で二年目のFourth TermまたはFifth Termのうち一つの学期を費やして、提携しているBusiness Schoolへ留学して学業を営めます。2020年現在で、IESEが提携しているBusiness Schoolは14か国、30校あり、学校によって交換留学生枠が異なります。但し、”交換留学”という呼び名の通り、前年に対象の学校からIESEへの留学生派遣がゼロだと翌年の当該校のIESEからの留学生受入れ枠がゼロとなる事がある事も書き加えておきます。IESE一年目のThird Termが始まって直ぐの4月上旬にBiddingプロセスがあり、生徒が交換留学制度を希望するか、どの学校を志望するか、という意思表示を行います。故に、それまでにリサーチを行い、交換留学制度を利用する意思決定をして自分が行きたい学校を選択する必要があります。当然、MBAランキングの上位校に人気が集中しますので、Second Termまでの成績で選考が行われます。幸い自分は第一志望でBidしたDuke大学Fuqua Business Schoolの3つある枠の一つを勝ち取る事ができました。
さて、本題の私がどういった目論見で交換留学制度を活用したかという点についてご説明したいと思います。予算や住環境といった前提となる制約事項とは別に、私は大きく2つの理由で交換留学制度を活用したいと考えておりました。一つ目がアカデミックにおけるPost-MBAを見据えた専門性の強化、二つ目がプライベートライフにおける南米探検です。結果から申し上げるとその目的はFuqua Business Schoolでの経験を通じて達成が出来ました。二点目は旅行が趣味の私にとっては重要事項でしたが旅行専門のブログに譲るとしてこの場では一点目の専門性強化についてご説明致します。
私自身はシステムエンジニアバックグラウンドで、Post MBAとして戦略コンサルタントへのキャリアチェンジを志向しておりました。そのため、一通りのスキルセットを必修科目として履修できるGeneral Management志向のIESEカリキュラムはとてもFitしていたのですが、二つの軸で更なる専門性強化の必要性を感じていました。一つ目の軸がFinance分野の深掘りといういわば縦軸の強化、二つ目の軸が業界に関する知見を広げるという横軸の強化です。一点目の縦軸の強化に関して補足すると、P/L責任を負われている経営層の方々とお話をする際にベースとなるファイナンス思考を養うため、教授からのレクチャーから得る専門的な知識や自ら手を動かすモデリング課題などを通じて得る実践的スキルを求めていました。二点目の横軸の強化に関しては、私自身がMBA留学前までは一つの業界に長く留まっていた事もあって、全く接点の無い業界についてFrom scratchで取り組むという経験に加え、特に近年注目度の高いTechやMedical業界について業界構造やトレンドを学び、キャリアの幅を広げる事を目論んでいました。そこで、Financeの選択科目が充実しており、且つ全米でトップクラスのMedical Schoolを有するDuke大学を志望しました。在学中は約4カ月間で8科目を履修しましたが、スペースの都合上特に印象に残っている4科目について、どういった点について交換留学を通じて補完できたのか、具体的にご紹介したいと思います。
o Corporate Finance
CFOサーベイで著名なJohn Grahamが教える授業で、人気が集中するため彼は同内容の授業を4クラスも受け持っています。授業の概要は、Financeの基本的な概念や公式の復習に始まりValuationや企業価値と負債の関係性等を掘り下げます。IESEの必修科目ではカバーされなかった、海外における外貨建てDCF、コングロマリット企業のValuation、税効果と負債コストを加味した資本構成の最適化、等といった応用レベルにまで踏み込んだ内容を学ぶ事で、私の中で用語や概念の理解といった一次的なスキル習得であったファイナンスをより構造的で二次利用が可能なスキルへの昇華が出来たと感じます。
o Financial Statement Analysis
財務諸表を分析するオーソドックスなDu Pont Compositionに始まり、Advanced Du Pont Composition, Cash Flow Analysis、そして自ら手を動かしてPro formaの作成まで反復して行います。中間試験において、3,4時間程かけて一から作成したPro formaのキャッシュフローが合わなかった時はこの世の終わりかと思いましたが、一から順序だてて予測を組み立てていく作業や自らのミスを探す作業も含めてかなり実務的なスキルが身についたと思います。
o Detecting Earning Management
財務諸表のどの項目にどう恣意性が含まれるのか、勘所や数字の紐解き方、そして作成側の動機と紐づけながら財務諸表の裏にあるストーリーを読み取るスキルを磨きます。売上を水増しするChannel Stuffingに始まり、最終的には株主に約束した目標の必達と財務諸表に恣意性を含める事で失われる公明さに揺れる経営者の倫理観にまで踏み込みます。「利益は意見、キャッシュは事実」という格言がありますが、その”意見”を解釈する切り口をいくつも学ぶ事が出来、とても学びの多い授業でした。
o Healthcare Markets
ヘルスケアに関する記事や論文をベースとしたケース、マーケットのエコシステム、統計学のモデル、という三つのツールを織り交ぜながら主にアメリカのヘルスケア業界の理解を深めます。少し前に話題になったNikeのVaporflyの有用性を証明する事がなぜ難しいのか、という点を統計学的見地から紐解く問題提起に始まり、終盤ではタスキギー梅毒実験という非倫理的人体実験に始まる根深い人種差別とヘルスケア業界の関係性を取り扱いました。全く経験の無い私にとって、ヘルスケア業界の実務経験者やヘルスケアを専攻している学生に混ざって揉まれるのはしんどく、授業についていく事だけで精一杯でしたがヘルスケアのエコシステム理解に加え、統計モデルも新しい発見の連続で毎回の授業が目から鱗でした。
上記分野の実務経験がない私は課題や試験勉強で学期中は週末含めてかなり繁忙でしたが、なんとか良い成績を修める事ができました。一因として、IESEにおける一年目の必修科目履修とサマーインターン経験を活かして、チームアサイメントをリードする側に回る事でオーナーシップを持って取り組めた事が、少なからず寄与していると感じます。因みに、誤解のないように付け加えますが、IESEにおいてもVenture Capitalについて学ぶ人気授業”Venture Capital: Terms & Deals”や”Entrepreneurial Finance”といったファイナンス系の選択科目はあります。私見ですが、人気が集中するVCやPEに関する授業は多い反面、実務に近い視点でFinance/Accountingに焦点を当てた授業や一つの業界に特化した選択科目は少ないように感じます。短期的に必要とされる知識やスキルを求めて交換留学を志望して、結果としてPost-MBAのキャリアチェンジの支えとなる経験が出来たと思います。