Class of 2018のSです。
今回は、IESEで行われている数々のコンペティションの中で、Impact Investment Competition(以下「IIC」)についてご紹介します。そもそもコンペティションとは、課外活動の一つで、IESEや他のBusiness Schoolのクラブ活動の一環、或いは外部の企業が主催する形で、特定のテーマ、例えばビジネスアイディアや投資案件の提案等について、IESE内外のチームと競い合うイベントです。要するに、世界中から集まる企業や対戦チームを相手に、これまでの自身のビジネス経験、IESEで学習した内容、更には新たに出会った学友とのチームワークを通じて、自分がどこまで出来るか「腕試し」をする機会です。
中でも、IICは年1回、IESEを含めた世界のBusiness School 10校が参加する大規模な大会です。参加チームは、ベンチャーキャピタルの社員としてロールプレイし、社会的意義の高い事業を行う実在のスタートアップ4社に対して、①Due Diligence、②マネジメントインタビュー、③ベンチャーキャピタル投資委員会への答申、④Founderとの交渉をシミュレーションします。この①~④プロセスでは、実際のVenture Capitalistsが審査員を務めますので、プロの目線で評価を受けることができます。
【チーム構成】
先ずは、IESEのMBA学生1~2年生の中から自由にメンバーを組んで、チームを作ります。チームを構成する上で重要なことは、国籍・地域、性別、業界、Function(営業、財務等の職能)を多様化することです。IESEでは、世界大会に先駆けて、IESE代表チームを決める為の校内選考会を行います。その後、優勝したチームが計10校で競い合う世界大会に参加します。世界大会は各校1チーム5名ですが、校内選考会は1チーム4名で行われます。この1名の差には理由があり、IESE優勝チームは、校内選考会から世界大会までに、事務局が推薦する2位以下のチームの数名の中から、1名を世界大会メンバーとして追加します。事務局及び優勝チームは、選考会でのパフォーマンスを参考に、自分たちのスキル、経験、業界等を補完できるメンバーを選ぶことになります。ちなみに、私のチームは校内選考会で上位3位入賞し、結果、私が追加メンバーとして優勝チームに招待されました。
【スケジュール&大会内容概要】
11月 主催者であるIESEのVenture Capital Investment Clubからの説明会
12月 IESE校内選考会1次選考
- 投資やSocial Impactの基礎知識に関する筆記テスト。
1月 IESE校内選考最終選考
- 事務局から指定された実際のスタートアップ1社に関して、開示された事業・財務情報を基に、valuation、term sheet (株式取得契約及び株主間協定書の主要条件を纏めた基本契約書) を含めた出資提案書を作成・事務局に提出。
- 提案書提出の2日後に、IESE教授陣、同会社のCEOで構成された審査員に対して、投資に関する答申をプレゼン。
- 上記提案書及びプレゼン内容に対して、審査員が採点、優勝チームを決定。
2月 世界大会 @IESEキャンパス
- 大会開催日の約1週間前に、対象の4社の事業内容、財務情報が開示される。
- 大会当日迄に各チームは開資料やその他各自で集めた情報を基に各社評価を纏める。
- 大会当日は終日かけて、以下スケジュールで進行。
8:15-8:45 大会スケジュール説明
8:45-10:00 各4社からの会社概要に関するプレゼン
10:00-12:15 各4社の経営陣とのマネジメントインタビュー
12:15-14:00 投資対象1社の選定、Term Sheet、投資委員会提案書作成
14:30-16:15 投資委員会へのプレゼン
16:15-16:45 選定した投資対象 1社との交渉準備
16:45-18:30 選定した投資対象 1社との交渉
18:45 結果発表、カクテルパーティー
【学び・感想】
同イベントを通じて学べることは、ハードスキルとしては、Startupへの投資に関するValuation、ビジネスモデルの優位性分析、Social Impactの定性・定量的な評価、主要な契約書条件、出資後の当社会社としてのStartupへの支援方法等、Social Impact Investmentに関するステップ及び手法を習得することができます。ソフトスキルについては、チームメートとのチームワークやプレゼン技術に加えて、Venture CapitalistsやSocial Entrepreneursとの折衝を通じて、質疑応答や交渉での度胸やリズム、ロジックも体感するできることができます。
ちなみに、大会結果に関しては、残念ながら3位入賞は果たせませんでしたが、優勝するために改善しなければいけない点は勿論、大会に勝つ為の要素だけ追及しても実際の出資では不十分な点、もっと言えば、投資家として自分がこだわりたい点を再認識することができます。例えば、優勝チームの交渉では、「こちらから一つの条件を飲んだら、先方から別の条件を引き出す」という大会上の評価基準は満たしていましたが、交渉相手との会話は膠着状態でした。私の経験上、実際の交渉では、双方が主張する条件の重要度は決して一対一ではない点や、条件と条件を交換するだけでは、双方のconcernは必ずしも解消されるわけではないですし、もっと言えば、テクニックに走ってFounderに不信感を与えると、出資後の協力関係にも支障をきたします。このように、自分の経験と照らして、必要なものとそうでないものを見極めながら、新たなスキルを習得できるのもこの大会の醍醐味だと思います。
もう一点、ぜひ付け加えておきたいことは、新しい挑戦には時として予想以上のリターンが返ってくるということです!本開会後、IESEで初の学生主体のSocial Impact Fund、「IESE for Impact Community(IFIC)」が設立されることになり、私たちIESE優勝チームが同Fundの初代取締役に就任しました。既に初回の資金調達が完了し、2017年6月現在、追加のFundingと第一弾出資に向けたSourcingに取り組んでいます。こちらについてはまた別の機会に詳しくご紹介したいと思います。(IFICのwebsiteはこちらです。https://ieseforimpact.wordpress.com/)
以上、Social ImpactやVenture Capitalに関心がある方は、ぜひチャレンジしてみてください!