IESE 1年生のKです。冬休みに、バングラディッシュとマイクロファイナンスの現状を知るためにグラミン銀行でインターンをしてきました。インターン概要は先輩のブログに詳しいので、今回は概要以外のプロセス等を中心に記載します。無給のインターンに時間を夏休みに割り当てられないという経済的理由もあり、冬休みの活用を考えました。
冬休みは、MBA生活の怒涛の一学期の後の初めての長期休暇(通常2週間、最大4週間くらい)です。欧州ではクリスマスは家族で過ごす習慣が根強く、同級生の多くが故郷に旅立ちます(インターンするという話も聞きませんでした)。
出発前の空港で、フェイスブックにアップされるリア充写真(※)にいいねしながら、イブと年末年始をダッカ(最貧国のひとつ、基本禁酒)に乗り込むのは愚行なのではないか、と5分くらい真剣に悩みましたしが、結果としては人生観が変わる経験をさせていただきました。
※ドイツ(クリスマスマーケット(とホットワイン))・メキシコ(モヒート)・ドバイ(砂漠)・カナリア諸島(水着でサングリア)等々
1. インターン受入まで
10月末に書類(教授の推薦状、履歴書、簡単な志望動機)を提出し、11月中旬に受諾の連絡を頂きました。情報ソースは主に以下。
1) 過去にインターンをしていた/バングラデッシュで仕事していたという同級生2人
2) IESEの日本人の先輩(@日本)
3) IESEの先輩にご紹介頂いた方(@フィリピン)
4) 直接コンタクトした開発金融に従事している方(@ダッカ)
②の先輩はSKYPEで相談、外務省から不要不急の渡航を止められていたので①の同級生(スペイン人)に現地の治安確認をしてもらったことに加え、メンターの教授から頼んで3日後に自分とは思えない素晴らしい人を推薦するレターを書いてもらい、チームメイト(アメリカ人)に志望動機を添削してもらい。。。等々、IESEコミュニティのバックアップをフルに受けたお蔭で無事インターンに受け入れて頂くことができました。
2. プログラム概要とインターン中の日常
プログラムは、グラミン銀行及びグループの各担当者による概要説明(ソーラー・バイオガスプラント、携帯電話会社、ヴェオリア・ダノンとのJV)と現地視察(グラミン銀行の地方支店)2つのパートに分かれていました。プログラムは非常に柔軟で追加ミーティングの設定は随時可能でした。また、Yunus Center主催のSocial Business Labという四半期に一度のカンファレンスがあり、参加させていただくことができました。私は2週間だけだったのですが基本受入期間は1か月で、概要説明の後は自分の興味に合わせて現地視察をセットできます(家庭用ソーラープラント設置補助等)。
グラミン銀行はインターンを毎週受け入れており、私の週は参加者が11人(イタリア人とバングラディッシュの女子学生8名、ニュージーランドにいるバングラディッシュ人)。グラミン銀行推薦の滞在ホテル(多分3つ星、格安)に他の週に参加している、ブラジル・オーストラリア・イギリス等々からの学生が宿泊しており、クリスマスと年末年始も楽しく過ごすことができました。
3. 感想
今回、グラミン銀行の役職員(ユヌス氏含む!)に加え、①日本人NGO職員・開発金融職員、②ダッカ大卒バングラ人の若者、③アメリカで学ぶバングラ人、③貧困層(グラミン銀行借り手・物乞い)にお話しを聞くことで多角的にバングラデシュという国を捉えられた気がします。
最貧国というイメージが強いと思うので、少し補足すると、バングラディッシュのGDPは2014年に1000USDを超え、識字率・電気普及率いずれも約6割を達成しています。加えて、国全体が2014年もGDP成長率6%を維持、バングラデッシュの成長に希望を持っている状態です。他方、格差が大きく、町の食堂で食べるランチは1ドル以下も、高級カフェでのケーキセットは15ドル近くします。富裕層・特に海外の大学で学んだ青年層によるIT分野等での起業の出てきています。
外国人向けの夜間外出禁止令が出る等政情不安の中、蚊、大気汚染、匂い、騒音(自動車の)、物乞い、基本水しか出ないシャワー、いつお腹を下すかわからない不安等、日本と比べて決して快適な生活ではありませんでしたが、そこに人々の生活はあり(当たり前なんですが)、発展途上国に関わる仕事を選ぶということがMBA後の将来漠然とした不安が具体的な不安に変わった気がします。また、スラム街の現状は依然目をそらしたくなるばかりであり、その日暮らしをする人々への憤りも大きく、自分ができることがきっとあるはずだ、との思いも強くしました。
グラミン銀行については、批判は簡単ですが、ただ、グラミン銀行に救われ、心酔している借主が実在することは間違いありません。そもそもグラミン銀行のビジネスモデルの肝は発展途上国自力での持続可能なビジネスモデル設営にあり、グラミン銀行職員(支店長レベルからは院卒必須)はグラミン銀行で働くことに強い誇りを感じています。当該点が組織運営の規律となっているように思います。運営事態も⒛年試行錯誤を重ね、バングラディッシュの農村部のコミュニティに強く根付いています。文字の読めない借主に、少額資金を供与した上で、借主を支援しながら、資金回収をしていくために、“コミュニティ”の一環として村に在中し、毎週状況を確認していくビジネスモデルは確かにワークしていました。今後のマイクロファイナンスの普及・バングラディッシュの経済成長に合わせて新たなビジネスモデルの模索を始めているように感じました。
ブログなのに全く面白くなくて大変恐縮ですが、個人的にMBA後にやりたいことを確認するために必要なステップであったので、インターンしてみてよかったと思います。
4. (参考)グラミン銀行とは
グラミン銀行は、バングラディッシュにて地方の貧困撲滅を目指し設立された銀行(バングラディッシュ政府から銀行免許取得(但し業務は地方の貧困層向け貸付に限定))です。闇金(借入人が白紙押印・金利100%)等々から搾取されている貧困層向けに小口(最初は約2万円~)資金を提供しています。
2006年には、「底辺からの経済的および社会的発展の創造に対する努力」(wikipediaから日本語訳抜粋)を認められ、創設者のユヌス氏と共に2006年をノーベル平和賞を受賞しています。
要は、
1) イスラム社会において金貸しという抵抗感の高い業種で(イスラム金融では金利は原則ご法度)
2) 社会的地位が低い女性の地位を高め(現在は借主は女性に限定)
3) 貧困の撲滅に単体で採算がとれる形で具体化した(回収率98%(自称))
という機関として認知されているものと理解しています。ちなみに、ユヌス氏はSocial Businessの提唱者と言われており、グラミングループは、銀行業のみならず、通信・インフラ関連事業を多く手掛けています。