シンガポールでの留学体験記
私は2年時の4th Termを利用して、シンガポールの南洋理工大学 (Nanyang Business School)に交換留学をしました。その際にシンガポールにて就職活動をし、卒業後はシンガポールで働くことになりました。本ブログでは、主にシンガポールでの交換留学の経験を書きます。その中で、シンガポールでの就職活動についても触れていきます。
交換留学をしようと思った理由
新しい環境に飛び込み、変化を与えることで、新しい刺激を得たいと思ったからです。1年間IESEで過ごし、多くの友達もできましたし、授業のスタイルにも慣れてきたと感じていたので、新しい環境に飛び込むのが自分の成長には良いかなと思いました。交換留学をすることで国と周りの学生が変わるので、IESEでは得ることができない新しい気付きが得ることを期待していました。
なぜシンガポールなのか
・交換留学先としてはレアな国だが魅力満載
交換留学先として人気国はアメリカです。毎年MBAランキング上位に位置している学校はアメリカの学校が多いですし、歴史もあります。私は皆が行かなそうなレアな国に行き自分ならではの経験をし、差別化をしたいなと思いました。
アメリカ以外の国・地域では、東南アジアに興味がありました。地理的には近いのですが、仕事でもプライベートでも行く機会が少なかったので。東南アジアの中でもシンガポールはとても魅力的な国でした。多様な文化 (中国、マレーシア、インド、ヨーロッパ)が混ざり合っている国、最先端のビジネスでASEANの経済を牽引している国、外資系企業のアジアの戦略拠点と、興味深い国でした。
・今後のキャリアを見据えて
シンガポールはアジアの一国であり、かつ、外資系企業のアジア拠点と言ったグローバルな環境が整ってます。多くの日系企業もシンガポールに進出しており、外資系企業でグローバルな環境で働きながらも、アジア人・日本人である強みも活かせるような環境で、欧米諸国に比べると海外就職をする機会は多いかなと思いました。
南洋理工大学を選択
IESEと提携しているシンガポールの交換留学先はシンガポール国立大学(NUS)と南洋理工大学(NTU)の2校があり、私はNTUへ留学することに決めました。私は夏休みに3社でインターンシップを経験する予定で、10月半ばまで日本にいるつもりだった為、8月から授業の始まるNUSは選択できなかったからです。
NTUは理工系を中心とした総合大学で、QSワールド大学ランキングでは世界11位、アジアの中では1位にランキングされている大学です。MBAプログラムはFTのランキングで22位です。MBAプログラムの期間は約1年間で、生徒数は90名程度だったと記憶してます。私が交換留学に行った際は8人の日本人がいました。IESEでの日本人の比率よりも多いですね! 学生はアジア人が中心で、8割くらいいるのではないかと感じました。特にインド人が多く40%くらいはいるのかな。その次に多いのが日本人かなと。欧米人は少なくて全体で5名くらいだったと思います。
IESEとの違い
・総合大学であること
総合大学のキャンバスの一部にMBA校があるという点は一番の違いかと思います。
キャンバスが広大で、移動するのにすごく時間がかかりました。キャンバス内に住んでいる学生や教授も多く、夜中まで食堂が開いてますし、バスも深夜までキャンバス内を走ってました。学部生が全生徒数の3分の2 (23,500人)を占めるので、若さや活気でキャンバスが包まれてました。MBA生しかいないIESEとは大きく違う点です。
・生徒の構成
8割程度をアジア人学生が占めるので、IESEに比べて多様性には欠けるのかなと思いました。 一方で、アジア人ということで共通理解がある部分も多いので、その分深い議論できたり、共感し易かったりする場面はありました。また、アジアの中でもASEAN諸国から来ている学生が多く、発展途上のASEAN各国の経済発展の政策やビジネスモデルを彼らから学べました。
・授業
1) 授業時間
1授業が3時間15分ありました。1授業75分のIESEと比べて、とてつもなく長く感じました。時間が長い為、授業の中身は教授の講義やケーススタディのみで終わることが少なく、授業の半分は講義やケーススタディで残り半分は生徒による発表というが多かったです。
2) 授業で扱うテーマ
授業で扱う企業の事例もアジア企業が多かったです。特に中国企業やインド企業についての事例は多かった記憶があります。私が取っていた科目では教授がインド人2名、欧米人が2名 (うち1名はシンガポールに長く住んでいる)だったので、アジアへの知見が非常に深いことも関係していると思います。
シンガポールに交換留学に来て良かった点、悪かった点
良かった点
・アジアのビジネスを知れた
アジアのビジネスについて、理解が深まりました。これはアジアビジネスに詳しい教授陣とアジア出身の学生から実体験を通じた生の情報をベースに議論ができたことが良かったのだと思います。
・シンガポールという国を経験できた
今までに住んだことがない国に短期間であったにせよ住めたことは大きな経験でした。やはり数日間の滞在の旅行とは違い、住居を構え、ローカルの食事をし、シンガポール人と交流することで、多様な文化が混ざり合ってできている国であることをあらためて感じることができました。
・シンガポールで就職する機会ができた
シンガポールに交換留学に来たお蔭で、シンガポールが好きになり、ここで働きたいと思えるようになりました。
悪かった点
・費用がかかりすぎた
費用が思った以上にかかりました。世界一生活費が高いと言われているシンガポールで子連れの私費学生が暮らすのは正直厳しかったです。NTUにも日本人私費学生がいましたが、彼らは大学内にある寮に住み、生活費を浮かせてました。一番の出費は住居で、短期間の滞在ということで住めるアパートメントが限られていたこともあり、バルセロナの住居費の2倍くらいかかりました。。
・スペインに戻る為のVISA取得が大変だった
当初、在シンガポールスペイン大使館でスペインVISAを取得予定でしたが、家族のVISAが在日本スペイン大使館以外では取れないことが発覚しました。私、個人ではシンガポールでスペインVISAを取得できることを確認していたのですが、家族分は盲点でした。大使館のWEBにも家族のVISAについては、詳しく書いてないので、良く分からなかったです。。結果、VISAをアプライする為だけに家族で日本に帰国するという費用的にも時間的にも無駄をしました。
・学校の寮以外に住む学生には不便な環境
ほぼ全ての学生が寮に住んでいるので、学生同士のミーティングやイベントは寮や学校で行うことが多かったです。私はシンガポールの中心部に住んでいたので、参加が物理的に難しいことが多かったです。(中心部から学校まで1時間弱かかります) 寮に住んでいない限り学生と接する機会も限られて、交流をなかなか深められなかったなと思います。
・選択できる科目が少なかった
NTUとIESEの授業開始期間が異なる為に、物理的に選択できる科目少なかったです。(NTUは11月から2月が1ターム。IESEは9月から12月が1ターム) Entrepreneurshipという科目が取りたかったのですが、2月まで続く授業だったので、取れなかったです。。(1月半ばにはIESEでの5th Termに参加する為にバルセロナに戻らないといけなかった)
上記、良かった点と悪かった点を総合すると、シンガポールに交換留学に来たお蔭で就職する機会が出来たので、結果、”良かった”のかなと思います。就職ができなければ、”悪かった”と判断するかもです。(理由は費用がかかり過ぎたのと選択できる科目が少なすぎたから)
Singaporeでの留学生としての就活事情
シンガポールでの就職は外国人にとって年々厳しくなっていると聞きます。NTU学生の多くはシンガポールで働くことを目的に来ている人が多いのですが、現実はシンガポールで職を見つけることは非常に難しく、自国に帰らざるを得ないと聞きます。その背景は、シンガポール人の雇用を増やしたいので、シンガポール政府が外国人の雇用に年々消極的になっているようです。私が就職する企業からも、政府からシンガポール人を雇うように言われていると聞きました。一方で、グーグル、フェイスブック、マイクロソフトなどのテック系企業については、噂ですが、積極的に外国人を採用中と聞きます。シンガポール政府が新しい産業を積極的に伸ばそうとしているのと想像します。
私自身、海外で就職することはレベルが高すぎて、MBAが始まった当初は想像もできませんでした。英語のレベルがとても低く、授業について行くのがやっとでしたので、外国人に囲まれて仕事をするなんて無理だろうと思っていたからです。
そんな私がシンガポールで就職できた理由の一つは準備を抜かりなくやったことにあると思います。英語のコンプレックスがあった分、インタビューの準備は徹底的にしました。聞かれそうな質問を20-30くらいピックアップして、DMM英会話 (ネイティブ講師)を使い、2,3か月間毎日30分から1時間、インタビュートレーニングを積みました。そこで、ロジックがスムーズかどうかを何度も試し、分かり易い言い回しを作り込んでいきました。練習の結果、一般的な質問を答える上には、全く問題がないようになりました。
海外就職する為には人との繋がりも重要になります。ターゲット企業で働くIESEの卒業生や知人とコミュニケーションを密に取り、外国人の採用需要があるタイミングを逃さずに選考を受けることは大事です。(当たり前ですが、需要がない時に受けても、よっぽどなことがない限り受かりません) また、シンガポールの有名大学に交換留学に来ていたということももしかしたらプラスに働いたのかもしれません。
結局、私は誰もが驚くような特別なことはしていないのですが、当たり前のことを徹底したことによって、シンガポールでの就職の道が開けたのかなと思います。
シンガポールに限らず海外での就職は厳しいですが、誰にでも平等にチャンスはあるので、諦めずに頑張って下さい。