インタビューの趣旨について
私たちIESE日本人在校生は、自分たちのキャリアだけでなく、将来のビジネスリーダーとして日本の未来のために何ができるか考えていきたい、また日本の皆さまにも考えるきっかけを作りたいと考えています。
今回は、在バルセロナ日本国総領事館総領事の四方さんに、「スペイン語との出会い」、「外交官として歩まれてきたこれまでのキャリア」、「そして国際舞台で働くこと」についてお話を伺いました。
四方明子(しかた あきこ)さんについて
在バルセロナ日本国総領事館総領事。
1986年3月、上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、4月に外務省に専門職員として入省。
外務省の専門語学はスペイン語。入省後はスペインの首都マドリードで2年間の研修を経験。マドリードの外交官学校(Escuela Diplomática)にて、スペイン人の外交官志望者や中南米、アジアからの留学生と共に国際コースを履修、卒業。その後、マドリード工科大学にて、スペインの社会人とともにEUに関するマスターコースを履修。
その後、在メキシコ日本国大使館(1989-1991年、2002-2005年)、OECD日本政府代表部(1999-2002年)、在英国日本国大使館(2013-2015年)への海外赴任を経て、大臣官房広報文化外交戦略課企画官、大臣官房総務課地方連携推進室長、衆議院事務局国際部渉外課長、中南米局中米カリブ課地域調整官などを歴任し、2024年3月に現職に着任。
プライベートでは、職場結婚(外務省員同士の結婚)したご主人との間に一人の息子さんがいらっしゃり、息子さんと二人での海外赴任経験がある。
スペイン語との関わりについて
Q. 四方さんは大学でスペイン語を専攻されていますが、なぜスペイン語を学ぼうと思われたのでしょうか?
子どもの頃、ニカラグアで大地震があったときに見たテレビの映像が強く印象に残っていて、漠然と「いつか開発途上国の人々の役に立つ仕事がしたい」と思うようになりました。そして、大学進学の際に、その思いを形にするためには中南米のことをもっと知りたい、その第一歩としてスペイン語を学びたいと考えたのがきっかけです。
Q. 外務省を志した理由を教えてください。
大学でスペイン語を学びながら、中南米をはじめとした開発途上国の現状を知る中で、そうした国々と日本の架け橋となるような仕事に就きたいと思うようになりました。語学を活かし、国際的な舞台で日本の立場を伝えながら、現地の人々と信頼関係を築いていけるような仕事に強く惹かれ、外務省を志しました。
加えて、当時は現在よりもはるかに、女性にとって就職やキャリア継続が難しい時代でした。就職活動の際には民間企業への就職も検討し、さまざまな会社説明会に参加しましたが、女性として長期的にキャリアを築いていくには困難が多いのではないかと感じる場面が多々ありました。そうした背景から、制度的・文化的にも平等性が高く、女性にもチャンスのある公務員という選択肢に魅力を感じました。
Q. 外務省での専門言語としてスペイン語を選択されたのは、将来、スペイン語圏の大使館・領事館への勤務を希望されていたのでしょうか?
はい、特にその中でも開発途上国で働きたいという思いがありました。
当時は民間企業における女性社員の海外派遣は非常に稀で、特に途上国への派遣はほとんどありませんでした。公務員であれば、女性の私でも途上国に行く機会があるのではないかと考えました。
Q. マドリードの外交官学校での勉強は大変だったと伺っています。スペイン語ネイティブとともに、国際コースの科目を学び、論述・口頭試験を乗り越えられた、その原動力は何でしょうか?
本来であれば、まずは語学学校でスペイン語をしっかりと基礎から固めるのが王道だったと思います。でも、困ったことに私は昔から「背伸びをしてしまう質」でして、いきなり1年目からスペインの外交官学校に飛び込みました。
スペイン語ネイティブの学生たちと同じ土俵で、大学院レベルの講義、試験を受けたのですが、最初の1年は本当に「ついていくのに精一杯」でした。寮の食堂ではネイティブ同士の早口な会話についていけず、落ち込むこともありました。
乗り越えることができた原動力は、やはり「志」だったと思います。困難の中でも、「業務を遂行するために必要な高度なスペイン語力を獲得したい」という強い思いが支えになりました。そして、周囲のスペイン人やラテンの人々の温かさにも何度も助けられました。

スペイン国王ホァン・カルロス1世(当時)から外交官学校の卒業証書を授与される四方さん
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