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中国モジュールを終えて

こんにちは、2年生の永田と申します。IESEでの経験の一環で中国に1ヶ月ほど滞在していたので、その中での経験を共有させて頂きたいと思います。

バイアスなく今の中国を見るべし

中国に興味を持ったのは明確なきっかけがあります。2年目の秋(2017年秋)に私はテルアビブ大学に交換留学に行っていたのですが、学校の食堂で何気なく同じく交換留学にきている中国人と話していました。その席には大変ポリティカルな話題が好きなボリビア人もいたため各国の政治について話していたのですが、その際にその中国人から中国の政治について聞かされたことに非常に衝撃を受けました。曰く、「とにかく今の中国人の共産党の指導層に対する信頼はめちゃめちゃ高い。今の中国の統治モデルはワークしていると思う。中国人は未来に対してすごい楽観的だし、これからも発展していくと思う」。

このコメントは非常にショッキングでした。自分がいかに中国に対するバイアスにさらされていたかに気づいたからです。知らないうちに、自分は「中国の不動産バブルは崩壊する」とか、「資本主義は優れている」というバイアスがかかった価値観にさらされており、例えば共産党への支持がこれほど高いことなんて、全く想定していなかったからです。ハッとしてAmazonで「中国」で日本で発売されている書籍を検索してみると、あれよあれよと中国悲観論に対する本ばかりが出てきました。こいつはやばいと思い、もっと中国をバイアスなく見る必要があると思い、年末の1ヶ月を中国で過ごすことに決めました。まさにその出来事の数時間後に、何気なくtwitterをみていたら、Ian Bremmerが”China Won”というタイトルの記事を出していて、オーマイガなんてタイミングだ、と思ったこともよく覚えています。

Immerse into China

中国には12月の中旬から1月中旬まで、1ヶ月いました。その間は、3本建てで計画を建ててました。

最初の一本は、2週間程単純に何の予定も建てずに、中国の深センに滞在していました。中国のシリコンバレーと呼ばれるこの街がどのような様相なのか見て、あわよくばロボットの一つでも作ってやろうかと思い、愉快なロシア人やセルビア人が住む一泊1,500円くらいの安ホステルに滞在していました。いろいろと発見はあったのですが、IESEはあんまり関係ないので詳細は割愛します。ちなみにロボットは作れませんでした。

2本目は、IESEのCareer Serviceが主催したChina Trekへの参加です。これは学長肝いりで進められているトレックで、今年が2回目。目的は香港/深センにある企業(ベンチャー、多国籍企業)を訪問し、リクルーティング及び視野を広めることが狙いです。今回は20名程が参加し、Tencent、DJIといったメガベンチャー(@深セン)、Adidas、BASF、Schneider Electronicsといった多国籍企業(@香港)、クラブでのライブストリーミング事業を手がけるベンチャー(IESEの在校生が共同創業者で入っている会社。@深セン)といったWide varietyなラインアップで、訪問先の企業とディスカッションをしました。ちなみに、学生ではなくCarreer Serviceが企画しているため、訪問先で受け入れてくれる企業の人たちは非常にハイランクの人で、例えばSchneider Electric(売上高3兆円前後)は人材部門のグローバルヘッド(CHRO。IESEのアルムナイ)が迎えてくれました。

最後は、IESEの上海モジュールです。これは海外モジュールと呼ばれるIESEの授業のプログラムの一つで、NY、サンパウロ、ナイロビ、上海というIESEが海外キャンパス、ないし強いパートナーシップを持っている学校がある都市で開催される授業です。上海では2週間授業が開催され(私は都合があり前半の1週間のみ参加)、パートナー校であるCEIBS(China Europe International Business School)で行われました。私はManaging Global Operationsというオペレーション系のものと、People Management and Asiaという授業を取り、通常のケースによる授業と会社訪問やゲストスピーカーを混ぜたような内容でした。授業は18時頃には終わるので、当然そこから飲みに行き、最後はM1NTという上海随一の外国人向けクラブで締める、というストーリーラインでした。

山ほど書きたいことがあるのですが、IESEブログということでこの中国の滞在の中でIESEに関係がありかつ大変感銘を受けた事のみを、以下数点記していきたいと思います。

***

Fortune 500企業の役員から深センの起業家まで

上にも書いた通り、China Trekではかなり幅広いレンジの企業と会うことができ、それぞれに面白みがありました。

Schneider ElectricというFortune 500に入っている企業の役員との面談は、まさに普段やっているケースのディスカッションそのままの内容で、特に最近興味を持っている組織論系の話で非常に盛り上がりました。この会社は香港、米国、ヨーロッパにそれぞれHQを持ったかなりグローバル化を進めている企業で、数年前にフランスの一局HQであったものを一気に多極化しました(Executive managementが実際に香港等に移住しているので、リアルな多極化です)。議論の内容は多極化でローカルが近くなる一方でどのように生産性が失われるのか、Transitionをどうやったか等授業がママ活きた感じで、ケースがマネジメント的な視点を育てるというのはある程度本当だなと実感しました。

一方で、深センではClubbing Bearというクラブ向けのアプリを作っている起業家と面談しました。IESEの2年生の在校生が創業メンバーで入っている企業ですが、クラブ(ディスコ)のDJブースの横にある大型スクリーンとスマホを連動させてスクリーン上に観客のメッセージ(ニコ動の横に流れるコメント的なやつ)を載せたり、クラブ内のライブストリーミングをスマホで見れたりするようにするサービスを作っています。衝撃的な機能が、中国では「投げ銭」的に他のユーザーに現金(電子キャッシュ)を送ることが非常に盛んなのですが、クラブ内でホットな人がいたらその人目がけて「投げ銭」ができる機能を搭載していることです。イケてる男女はクラブに行くだけで生活ができてしまうわけです。すごい世界観です。

衝撃的な機能の話はともかく、深センというものすごい伸びてるスタートアップエコシステムの世界を垣間見れたのは大きな収穫でした。同時に、この世界は本当に中国人で固められていて、外国人がこの中に入るのは相当なバイジョー飲みじゃないとハードルは高いだろうなという認識も持ちました。

国際社会の中でのアイデンティティ ー People Management and Asia

自分は何人なんだろうと考えることがたまにあります。勿論日本人なんですが、例えばバルセロナでホームパーティーをしてそこに10家国以上の国籍の人間がいて、エッジが効いた下ネタで笑ってる瞬間などは、もはや自分が何人だろうが全く構わなくなる瞬間もあります。更に、技術でどんどん世界の距離が狭まっていく中で、これからは国籍なんか意識するのはちょっとナウくないよね、という議論があることも認識しています。一方で、日本という枠組みで、日本という公がもっと良い社会になるために何かをしたい、という気持ちが自分にあることも強く認識しています。

上海モジュールで取ったPeople Management and Asiaの授業(Yih Teen Lee教授)は、こうした最近考えている自分の中のパラドックスに、大きなヒントを与えてくれました。授業自体は、Culture differenceが発生する(特にアジアのコンテキストの中で)ビジネスの中でその差異を理解して、bridgeして、しっかりと人を動かしていくことが、マネージャーとしてのパフォーマンスを大いに高めるという内容でしたが、授業の最後に、「じゃあ、自分はどのような国際的なアイデンティティを持っているんだろう」という問いに行き着きました。そこで得た最高の気づきというのは、自分の中に複数の顔を持ったアイデンティティが存在していい、ということと、「国際人」というアイデンティティがあるということを知ったことです。つまり、日本人という強いアイデンティティを持ちながら、自分の中に国際人としての人格が「同時に」存在しても良い。そういうアイデンティティの多層性みたいなものが存在するということが授業の最後に出てきて、膝を打つというのはこういうことかいうくらい合点しました。

IESEの授業というのは、ビジネスを超えて自分の価値観やアイデンティティを見つめ直す機会にもなることが、素晴らしいことだと思っています。また、この授業は上海というアジアの国で受けたからこそ、よりリアリティを持って学ぶことができたと思っています。そういう意味で、どこの土地で学ぶかということは学びの深さに非常に影響を与えると思いました。

CEIBS設立 ー Pedro Nueno教授の話

CEIBSという学校の設立にはIESEが関与しています。中国にもこれからはビジネススクールが必要であろうとの先見の元、IESEを含むヨーロッパの幾つかのビジネススクールが欧州委員会と共に中国政府と協働し、1994年にCEIBSが設立されました。その際に中心的な動きをしていたのがPedro Nueno教授で、現在でもCEIBSの学長を務めています。CEIBSでの授業の冒頭にPedroが10分くらい話にきてくれて、その設立の際の話をしてくれました。非常に感銘を受けたのが、Pedroのビジョンの大きさです。90年代の中国にビジネススクールを作るということ、またこれからのビジネススクールの学びには自校を超えたパートナーシップが益々必要になるというビジョンの元、CEIBSの設立に奔走していたようです。まさにアントレプレナーシップを持った教授で、10分の話の中でインスピレーションを大いにもらいました。IESEは他にも南米やアフリカでビジネススクールの立ち上げをサポートしており、Pedroのビジョンが他にも影響を与えていることがわかります。ちなみに、IESE自体も元々は1960年代にハーバードビジネススクールの協力の元MBAプログラムが設立されています。CEIBSの台湾人の学生と話していた際に、「CEIBSにとってIESEが親で、ハーバードが祖父母なんだ」と言っていたことをよく覚えています。

IESEというネットワークの中に自分がいる事

香港といえばペニンシュラホテルが有名だと思いますが、IESEの香港事務所はそのペニンシュラから歩いてすぐの高層ビルに入っています。東京の事務所は六本木ヒルズにあるので、ノリが似てるなあと思いました。それはさておき、この香港事務所というのは、とある香港の実業家のサポートによって事務所の費用が賄われています。その実業家は、IESEの教育理念に共感し、資金を提供してくれているそうです。この他にも、香港では大物の実業家はじめ色々な人がIESEの「ファン」になってくれ、様々な形でサポートをしてくれているそうです。この話は、IESEのアジア担当のCareer Serviceの人と香港の街をぶらぶら歩きながら彼が教えてくれたのですが、ここで彼が強調していたのは、世界中に学校の教育理念に賛同してくれている人たちがいて(もちろん卒業生含む)、そうした人たちからの信頼によって学校が支えられているということでした。IESEという学校は「公に対して大いに貢献できる人材を輩出する」というミッションによって存在意義を持ち、他の学校が一朝一夕では作り出せない文化を持っている学校なので、この教育理念を絶対に揺らがせずに信頼を維持し続けることが、学校が存続する上でCrucialなんだと。

この話を聞いて、何よりも自分がその信頼を創り出していく一端を担っているんだということを強く感じました。そして、恐らくこれはアジアで聞いたからこそより一層重みを持って響いてきたんだと思います。自分がこのネットワークの中にいることに非常にありがたみを感じるとともに、自分自身が成長して還元していきたいと思いました。

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つらつらと書いてしまいましたが、本当に濃い1ヶ月を中国で過ごすことができ、ビジネスからアイデンティティまでMBAでの経験を凝縮したような日々でした。また行きたいな〜

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