キャリア

現地デザインファームでのサマーインターンシップ

*本ブログは学校の公式見解を述べるものではありません。また、IESEはdiversityを重んじる校風であり、IESE生内でも様々な感想や意見を持つ人がいます。あくまでもそんなIESE生の一個人の感想として読んでいただけたら幸いです。

2年制のIESEでは1年生と2年生の間の期間にあたる夏休みに多くの学生がインターンシップを経験します。私はスペインに位置するデザインファームでインターンをしておりましたので、それまでの経緯含め、少しお話しできればと思います。

①デザインファームという業界

1年生の後半にかけ、デザインファームでのインターンの機会を探しておりました。デザインファームで働きたいと同級生に話すとポカンとされることが多かったのですが、大雑把には、人文科学の視点を取り込んだり、デザイナー特有の感性やプロセスを織り込みながら、プロダクトやサービス設計の支援をするファームを指します。以前より私は、人間の幸福は金銭の多寡とは別軸で存在すると考えており、そのヒントは英語でも”ikigai”という単語が存在するように、人間が感覚的に好きなものであったり、強い使命感を感じることができるものにあると思っており、デザインファームが創造しようとしている世界観に強く共感しています。美大を卒業した世間一般でいうところのデザイナーが多いのもデザインファームの特徴であり、彼ら彼女らの独特の観察眼や表現力をビジネスの世界に持ち込み、従来の直線的な成長からは生み出されないイノベーションに挑戦しています。

知名度からも業界としてはまだまだ小さいかもしれませんが、経済的に豊かな国やZ世代を始めとした人々が、従来の資本主義が追い求めてきたものに疑問を呈し、ウェルビーイングやソーシャルインパクトといった価値をより重視するようになっていることからも、今後より一層重要性が高まる業界であると私は考えています。

②インターン獲得までの道のり

上述の通り業界として大きくないことから体系だった採用プロセスはほぼ存在せず、独自にルートを開拓していく必要がありました。ポジション募集の有無に関わらず自分の経験が活かせそうな職種が存在する企業のリストを作成し、片っ端からコールドメールを送っていました。いわゆるデザイナーバックグランドではないこともあり、多くは返事すらもらえませんでしたが、それでも今回の受け入れ先含め、私の経歴に興味を持ってもらえた複数の企業とお話しさせて頂くことができました。

受け入れ先との面談の中で、私の長期的なミッション(Will)、インターンでやりたいこと(Want)、チームに貢献できうること(Can)に共感してもらえたこと、加えてちょうどそのタイミングで受け入れ先が日本やアジアの案件に注力しようとしていたというボーナスポイントもあり、幸いにもお互いのニーズが噛みあってインターンをさせてもらえることになりました。よく海外就活では何十もの応募をすべき、という話を耳にしますが、まさにこの公開情報を超えたフィットを引き当てるために必要なアクションだと思いました。また、この時既に夏休み開始までに1ヶ月を切っていたこともあり、最後までやり抜く粘り強さも時に必要かもしれません。

③スウェーデンでの生活

さて、こうして夏休みを迎えたわけですが、コロナの影響で原則リモートだったので、スウェーデン・ストックホルムでリモートワークしておりました。スウェーデンを選んだ理由としては、夏の季節を快適に過ごせそうだというのに加え、北欧デザインに代表されるような洗練されたデザインに出会えそうなこと、世界の幸福度調査でも毎年上位にランクインすること、から何か面白い発見があるのではないかという期待もあったからです。実際に2ヶ月弱住んでみて、一つ一つの造形が美しくて心地よく、また都市部であっても自然ともうまく共生しており、その空間にいられるだけで私にとっては充実した時間でした。

特に印象的だったのは、彼らが公序良俗を守りながらも個人の自由を非常に大切にしていたことであり、就業時間後に多くの人が野外で思い思いの時間を過ごしていたり、滞在していたAirbnbのホストも趣味にいそしんだりしていました。美しいものや自然に触れること、Autonomyが多幸感に寄与するとよく言われますが、スウェーデンはまさにそれを体現している国の一つであり、だからこそ高い幸福度を実現できているのではないかと思いました。リモートワークという働き方が当たり前になったことで、どこで生活するか、という観点がより柔軟かつ重要になったと感じます。

360度本棚で埋め尽くされていることで有名な市立図書館でも時折作業しておりました

④インターンでの活動

インターンでは、サービスデザインにおけるビジネス面を主に担当しており、例えばファイナンスモデルの作成や適用可能なテクノロジーの調査、ベンチマーク事例の分析、アイディエーションといったことをやっていました。ある程度前職やMBAでの知識・経験とオーバーラップがあったためスムーズに取り掛かることができつつも、How might we ~?(どうすれば~できそうか?と解決の方向性の制限をかけつつ、新たな視点でアイデアを生み出すことを狙う)フレームワーク等の彼らがよく使う発想法にも触れることができ、より本業界のプロジェクトの進め方の理解を深めることができました。一方で、全く新しい人間が組織に飛び込んでいるわけですから、信頼関係がゼロのところからどうすれば短期間で自分が何ができる人間なのか示し、より面白そうなタスクを担当できるようになるか、はよく考えさせられました。読者の中には英語で業務を行うことも含めて、このような環境で働くことに躊躇いを感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、IESEでのチームを始めとした濃密なディスカッションを経験することで、インターンでのミーティングはその延長線のように感じましたし、自分の得意な戦い方も分かってくるので、振り返るとよい準備期間であったように思います。

また、インターン期間の2週間はオフィスに顔を出し、少ないながらも出社しているメンバーとの交流もありました。欧州を中心に様々な国での学歴・職歴を持っており、ジョークも交えながら各国の仕事の仕方等を話し合いました。それを踏まえて自分の価値観に合う国で働いている、という話が印象的で、何とも自由であることを大事にする欧州らしい考え方だと思いました。

幸いにも志望していたデザインファームかつ現地でのインターンを実現することができ、業界の理解や経験を深めると同時に、欧州で働く魅力も味わうことができました。 またその中で、自分はどのように働き、どのように生きていきたいのかを見つめなおすいいきっかけにもなりました。IESEでの最初の1年はこのトランジションを実現するのに必要な時間・経験・肩書を与えてくれ、将来何かしらのキャリアチェンジを考えている方にとって絶好の機会になると思います。

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