バルセロナ生活情報

パートナーの現地出産体験談

こんにちは。Class of 2024のパートナーYです。

夫のIESE留学1年目にバルセロナで出産をしました。今後、現地出産を検討される方へのご参考に少しでもなればと、当時の体験をシェアさせて頂きます。

1. 帯同〜現地出産までの経緯

夫がMBA受験を志した際に私は働いており、キャリアを中断させることや金銭的な不安から、帯同については少し躊躇していました。その様なタイミングで第2子を授かり、会社の産育休制度(最大で出産日から2年間取得可能)を利用することで上述の不安要素がなくなったため、当時3歳の長男も連れて家族で帯同することを決めました。

ただし、IESEの1年目は超多忙との噂。先輩家族からも、夫は家事・育児面で想像以上に無力と伺い、現地出産した場合、産後に上の子と新生児のお世話を1人でこなせるかが最大の懸念でした。また、コロナ禍ということもあり、家族からも心配の声がありました。日本で産んで後からついていくことも検討しましたが、最終的に、①スペインの医療水準は日本と遜色ないこと、②両親が産後1ヶ月ほどサポートに来てくれること、③折角帯同するならフル期間でバルセロナ生活を楽しみたいと思ったことから、現地での出産を選択しました。

2. 妊娠中

2.1 事前準備

現地で出産することを決めてからは、以下の確認や準備をしました。

① 渡航日の調整

出産間近になると、航空会社の規定上、医師からの許可証が求められたり、渡航できなかったりすることもあるので、安定期に渡航ができるように調整をしました。私の場合は、妊娠26週目に長男と2人で渡西しました。妊娠中の子連れワンオペフライトは非常に疲れるので、フットレストを機内持ち込みすると便利です。

② プライベート保険

妊娠・出産費用がカバーされるかの確認はマストです。我が家は家族でAXA保険に加入しましたが、Student Officeに出産予定日(12月上旬)と渡航予定日(9月上旬)を伝え、妊婦健診・出産費用がカバーされることを事前に確認しました。加入のタイミング等について条件があるようなので、今後現地出産をされる方は、各保険会社に必ず確認した方が良いです。無痛分娩の費用も全額カバーされ、出産費用自体は日本よりも抑えることができました。

③ スペイン語の母子手帳

スペインの私立病院では英語が通じる医師も多く在籍していますが、看護師はそうはいきません。事前にネットでスペイン語の母子手帳を購入し、これまでの検診記録を書き写して持参しましたが、これは本当に役立ちました。

④ 病院探し

IESEの学生や周りの日本人の話を聞いていると、Dexeus病院(レスコルツ地区), Corachan病院または Teknon病院(サリア地区)で出産されている方が多い印象でした。私は医療通訳さんのお勧めでDexeus病院で出産しました。私立病院であればどこも基本的にクオリティに大差はないと思います。入院中は個室で、問題がなければ産後48時間(2泊3日)後に退院となります。日本のように、急がないと分娩予約がとれないということはないので、病院自体はスペインについてから探し始めても大丈夫です。

⑤ 手続き関係の書類

子供が生まれたら、スペインと日本それぞれに対して出生届を提出する必要があるので、事前に確認しておくと産後慌てずにすみます。2022年当時は、スペインの手続きは病院経由で必要書類を提出するか、スペインのRegistro civil(要オンライン予約)に必要書類と両親のパスポートを出生後30日以内に持参するかの、2つの方法がありました。当該書類は入院中に病院で貰えます。

また、日本への出生届の提出は領事館経由で行うことができ、当時の期限は生後3ヶ月まででした。こちらも必要な書類があるので、事前にウェブサイトか領事館を訪問し、書類の入手及び記入の仕方について確認することをお勧めします。日本から持ってきたアポスティーユ付き戸籍謄本はここでも大活躍します。

余談ですが、スペインで出生した子供は、両親が日本人の場合は日本国籍となります。領事館へ提出後、約1ヶ月程度で日本側の出生登録が完了するので、その後ようやく戸籍謄本を取り寄せて日本国パスポートの作成手続きへと進めます。

2.2 妊婦健診

我が家の場合、初回の病院予約と検診同行を医療通訳さんにお願いしました。人によって毎回同行してもらう方もいれば、最初から自力で通院している方もいますが、医療通訳さんは翻訳だけでなく、色々な情報を提供してくださるので、右も左もわからなかった私にとっては非常に心強かったです。

スペインの健診頻度は、日本と比較して少ないです。長男の時は、出産直前は毎週のように検診がありましたが、こちらでは出産間近でも約3週間ごとだったり、検診内容も毎回エコーを行ったりしないので、最初は少し不安な気持ちになりました。

もう一点日本と違うのは、血液検査や尿検査をラボで行うことです。病院附属のラボの場合は検査結果が自動で医師に共有されるので便利ですが、混んでいることが多いです。私は医療通訳さんにお勧めされた自宅近所のラボ(mdb Laboratori)で採血をし、検査結果を後日印刷して持参しました。

検診費用については、エコーも血液検査もプライベート保険で全てカバーされますが、薬局で購入するワクチンや薬類だけは唯一実費です。カタルーニャ州では、百日風のワクチン接種が妊娠中に義務付けられているので、こちらで追加接種をしました。

出産が近づくと、医師から入院時の持ち物リストと、バースプラン(Birth Plan)を記入できる紙を貰います。バースプランは、自然分娩と無痛分娩どちらがいいかを始め、細かく要望を書いて提出することができます。我が家は「家族に臍の緒を切ってほしいか?」との質問に「No」と記載していたにも関わらず、夫は当日、医師に「Why? Common!」と迫られ臍の緒を切らされていたので、バースプランはそこまで意味をなすものではないようです。笑

3. 出産・入院生活

当初の出産予定日は夫の期末試験後でしたが、運悪く、試験期間中、かつ両親が到着する前に陣痛がきてしまいました。夜中過ぎに軽い陣痛を感じ始め、明け方4時に家族全員で病院へ向かいました。子供は分娩室に入れないため、事前に相談していた友人に連絡して長男を預かってもらいました。長男にとっては初のお泊まりイベントで、親心としては本来ドキドキですが、今そんなことは気にしていられません。

数時間後、陣痛の痛みが強くなってきたタイミングで、夫から医師に麻酔の投与をお願いしてもらいました。ところが、陣痛の痛みが急速に増し、麻酔を打ってもらったものの十分に効かず。加速する痛みに「もう無理、死ぬ!!」と夫に訴えると、夫は翻訳アプリを駆使しながら看護師に追加の麻酔をお願いしてくれました。ところが、私の状態を看護師が確認したのち、急にバタバタと医師や大勢の看護師が駆けつけ、追加の麻酔が投与される間も無く、そのまま朝7時過ぎに直ぐ次男が産まれました。結局、私の場合は長男の時と同様、痛みで叫びながらの出産となってしまい、「無痛とは・・・?」という問いが産後の頭を駆け巡ったのを覚えています。

その後、病室へ移動し、医師や看護師が定期的に来て必要な検査を実施しました。入院中は3度の食事とおやつの提供もあります。病院の食事は、スペインらしいご飯でなかなか楽しいです。パエリア、パン、バナナ、ジャガイモという4大糖質が揃ったランチがでたり、これでもかという量の無味のカボチャスープや茹で野菜がでたりと、ツッコミどころ満載でした。

既述の通り、スペインでは一般的に産後48時間で退院となりますが、この間に授乳やオムツ替え、沐浴指導、病院側のミルクの用意などは一切ありません。看護師さんとは翻訳アプリでの曖昧なやり取りだったこともあり、これが第1子だったら相当ハードルが高かったと思います。あっという間の入院期間ですが、全ての検査が問題なく終わると、最終日に出産レポートや医師のサインした証明書、1ヶ月後検診の予約表(母分)を貰って無事退院となります。

4. 新生児健診・予防接種

AXA保険の場合、子供が生まれてから1ヶ月程度は親の保険で受診できますが、新生児も保険の加入が別途必要になるので、Student office経由で保険会社に確認が必要です。当地では基本的に1ヶ月ごとに検診があり、かかりつけ医がいつ何の予防接種を打つか管理してくれます。次男が通っていたプライベートクリニックでは、予防接種1種につき40€~というお値段でしたが、CAP(公立病院)では無料で予防接種が受けられるという話を聞いたので、費用を重視される方は、住民票と親子のパスポートを持って一度訪問してみると良いかと思います。ちなみに、スペインと日本の予防接種はほぼ同じものを打ちますが、唯一違うのは髄膜炎(カタルーニャ州は必須だが日本は不要)とBCGワクチン(日本は必須だがカタルーニャ州は不要)となります。(※全て2023年時点の情報)

5. バルセロナでの子育て

最後になりますが、バルセロナでは子育てが本当にしやすいです。ベビーカーでの移動のしやすさを始め、何より社会全体が子供を可愛がって大切にしている雰囲気があります。老若男女(文字通り、まだ小さい子供や強面のお兄さんも含め)出会った人のほとんどが、赤ちゃん連れを優先してくれ、子供に笑いかけてくれ、泣いているとあやしてくれます。日本だと嫌な顔をされたりすることもあるので周りに気を遣ってしまいますが、こちらでは「子供なんだから泣くのは当たり前でしょ」という雰囲気で、私も楽な気持ちで赤ちゃん連れでお出かけや外食ができています。

また、IESEファミリークラブにも、現地出産される方や赤ちゃん連れで来られる方がいて、家族イベントで交流したり、WhatsAppのグループチャットでお勧めの病院や育児グッズを質問しあったりできたのはとても良かったです。折角海外に行くなら、赤ちゃん連れでも国際交流できる場があればと思っていたので、IESEのコミュニティは非常に有り難く、良い思い出を沢山作ることができました。

長文となりましたが、日本とは多かれ少なかれ異なる点があるものの、バルセロナでの出産はとても貴重で良い経験となりました。今後、現地出産を検討される方のお役に立てば幸いです。



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